この日も小学生の義足の少年が、家族とともに初めて練習会に参加していた。少年が初めて付けるカーボンファイバー製の「板バネ」を、臼井さんは丁寧に調整していく。
「子供が義足で走れるようになると、何より家族の表情が明るくなるんですよ。本人だけではなく、周囲に前向きなエネルギーが広がっていくのを見ていると、スポーツの持つ力を実感します」
取材・文/稲泉連(いないずみ・れん)
1979年、東京都生まれ。2005年、『ぼくもいくさに征くのだけれど-竹内浩三の詩と死-』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『復興の書店』『豊田章男が愛したテストドライバー』『日本人宇宙飛行士』『サーカスの子』など。1964年の東京パラリンピックについて取材した『パラリンピックと日本人 アナザー1964』が好評発売中。
撮影/黒石あみ
※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号