互いに情報の探り合い
絆會は神戸山口組から2017年離脱し、池田組も2020年に神戸山口組から独立。もとは同じ組織に属していた2つの組の両容疑者は以前から友好関係にあったという。だが絆會は組を割って出た組織。山口組分裂抗争ではないが、逆盃で出ていく組を許すわけにはいかないのがヤクザの世界だ。
さらに池田組は岡山市内などにいくつもの不動産を所有する資金力のある組で、もとは神戸山口組の資金源と見られていた組だ。離脱した絆會にも、裏で資金を出していたとなれば大問題だ。今回の虚偽登記は池田組が独立する前に、組名義ではなく親族の名義を使って行われていたため、絆會との連携を隠す目的だったのではないかとの見方が広がっている。
暴力団組織としては他の組織の動向を注視することも必要だが、警察の動きも気にしなければならない。捜査の主導権を握るのはどこか。各県警も暴力団組織の一掃に向け、互いにしのぎを削っているようだと暴力団幹部は嘯く。
「まぁ、手柄の取り合いだね。こうした警察のゴタゴタは同じ県警の中でも所轄同士でもあるくらいなので。絆會の織田や池田組の池田を逮捕となれば、子分を捕まえるより点数がいいからね」という。何人もの下っ端組員を逮捕するより組の頭を逮捕したほうが、警察としては内外にアピールでき、仕事ぶりが評価されるということらしい。
暴対法や暴排条例以前は、所轄内に暴力団組織の事務所がある警察署や二次団体の組長らの自宅がある警察署では、暴力団などの反対社会的勢力の取り締り担当者がいて、互いに情報の探り合いをしていたという。
こうした情報は暴力団側にも伝わってきた。警察が暴力団の動きを逐一注視してきたように、暴力団側も警察の動きをチェックしてきたのだ。
常に塀の上を歩いているというヤクザには、他の組だけでなく警察の動きも組織の存続、自分の身の安全のために重要な情報なのだ。