失神するほどの痛みを伴う

 今回の事件でA受刑者の弁護を担当していた弁護士の三好健洋氏が語る。

「A氏は、深夜クラブ街に友人男性と2人で遊びに行っており、そこで女性2人組と出会ったと話しています。話し込むうちに、そのうちの1人の女性がA氏に『コンドームは持っているか。家に行ってもいいか』と聞いたため、A氏は同意し、その時点で性行為の合意が取れたと思い、そのままその女性を家まで招き入れた。しかし、女性はその時点でかなりお酒が回り酩酊した状態だったため、いざ行為に及んだときに目が覚め、A氏に抵抗したがA氏は同意がある認識であったため、そのまま行為に及んでしまったと話しています。行為中に撮影された動画も拝見した上で、客観的には、たしかに女性は抵抗する言動をとっていた。裁判所側はその動画を証拠として、一定の減刑をした上で今回の判決を下しました」

 A受刑者も恐れていた鞭打ちの刑は一体どのような刑なのか。

「判決が出てから、鞭打ちの刑が執行される時期は特に決まってはいませんが、大体数か月が経過してから、回数が多い受刑者から順に刑が執行されていくのが一般的です。この刑は50歳以下の男性の犯罪者にのみ科される刑で、主に性犯罪や薬物に関する犯罪の場合に科されます。1度に科される鞭打ちの回数は最高24回となっています。

 長さ1.5メートルほどの籐(ラタン)で作られた鞭を前日から水で湿らせて、よくしなるように準備をしておきます。刑の当日、受刑者の臀部を鞭で叩き、他の部位に当たってケガを負ってしまってはいけないため、動けないよう器具で固定されます。執行中失神するほどの痛みを伴いますが、原則として数日に分けて執行することは認められていないためどれだけ回数が多かったとしても同日で終わらせられるようにしています。シンガポールでは性犯罪の刑罰は、日本と比べてもかなり重いものとなっています。一部では、今回の判決は性加害に対する国外への見せしめとして重い刑が下されたとの情報も出回っていますが、それは事実とは異なります。今回の判決は、性加害に厳しいシンガポール刑法における過去の判例からも逸脱しない判決でしょう」

 ムチ打ち刑は臀部の皮膚や肉が裂け、痛みで寝られない日々が続くほどだという。

ムチ打ち刑の判決が下った受刑者A

ムチ打ち刑の判決が下った受刑者A

受刑者Aはムチ打ちを恐れていたという

受刑者Aはムチ打ちを恐れていたという

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