今夏の甲子園では、例年とは一風異なる現象が見られた。初優勝を果たした京都国際について、選手の活躍以上に「校歌」が注目されてしまったことだ。京都国際の小牧憲継監督(41)の複雑な胸中に、ノンフィクションライターの柳川悠二氏が迫った(全3回の第1回)。
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関東第一(東東京)をタイブレークの末に破り、京都勢にとって68年ぶりとなる夏の日本一を達成した決勝からわずか3日――。名刹・東福寺にほど近い京都国際のグラウンドでは、新チームの練習が早くもスタートしていた。監督の小牧憲継は、怒気を含めながら、栄光の瞬間からの時間をこう振り返った。
「野球が下手くそだったあいつらが頑張って、せっかく日本一になったというのに、試合後は韓国語の校歌がどうのとか、韓国大統領がどうの(※)とか、僕らからしたらどうでもいい報道ばかり。もっとこいつらのプレーを取り上げたって欲しいと思います。正直、むっちゃムカついていました」
【※韓国の尹錫悦大統領が優勝当日、SNSに「決勝戦の球場に韓国語の校歌が力強く響き渡った」などと祝福のメッセージを投稿した】
エース・中崎琉生に2年生の西村一毅というふたりの好左腕を擁し、堅実な守備で全国制覇に向けて勝ち上がっていくなか、話題は韓国系民族学校にルーツを持つ同校の韓国語の校歌に集中した。試合の内容や球児のプレーとは何も関係のないことばかりが取り沙汰される異常な状況には、私も強い抵抗を覚えた。
小牧は同校の全校生徒約140人のうち、男子生徒の約9割を占める61人の野球部員を指導している。そんな優勝校の監督ともなれば、本心は違っても学校側のサポートに対する感謝の言葉を口にするものだ。ところが、小牧の口から漏れるのは、学校に対する諦めに近い負の感情ばかりだった。
「良くも悪くも、学校は野球部に対して無神経で、無頓着。日本語の校歌にして欲しいとスタッフが願っても実現しないですし、グラウンドだって広くして欲しいと頼んだところで学校は協力してくれない。はっきりいって、僕は学校が嫌いです」
報道陣に対しては会話のあとに必ず「オチ」をつけて笑いを誘ったかと思えば、学園との軋轢を生むような発言も辞さず、甲子園後の報道に率直な思いを語る。