裏金議員に刺客を
その純一郎氏は、進次郎氏が出馬する総裁選で具体的にどう動くのか。
本人は、総裁選で田中真紀子氏という強力な援軍を得ていた。今回、父が進次郎氏の援軍となれば、「小泉父子劇場」が始まる。
「小泉純一郎は総裁選に絶対口出ししません。それは小泉の信念です。親が出て行って子供を応援するなんて、彼の美学ではありえない」と山崎氏は語るが、進次郎氏の出馬をめぐって父の盟友たちが動いたこと自体、総裁選の背後に純一郎氏の大きな影が見えている。
進次郎氏もそれを感じているのではないか。
「進次郎は演説も、政治手法も小泉元総理の背中を追っているように見える。総裁選では議員票の確保は必要だが、総選挙を見据えて国民へのアピールを重視するのではないか。国民の支持、つまり選挙で票が取れるということが総裁選の議員票獲得にもつながるとわかっているはず。
総理になった後も、大胆な解散戦略を練るでしょう。総選挙に勝つために、それこそ小泉総理の時のやり方を見習って麻生(太郎)さんら総理経験者に引退勧告を突きつけたり、裏金議員の象徴的な選挙区への刺客擁立を真剣に考えるのではないか」(自民党中堅議員)
進次郎政権が誕生すれば、早期解散という見方は山崎氏も同じだ。
「もし進次郎が総理・総裁になるのであれば、ただちに解散総選挙を断行して親父同様に当面、自民党を救う存在になるかもしれない。しかし、仮にそうなったとしても、進次郎政権は長続きしない可能性が高い。それこそが、親父が指摘していた経験不足です」
権力闘争の修羅場をくぐっていない進次郎氏には、政治家としての“凄味”を身につけるには、まだ経験が足りないと見ているのだ。
進次郎氏が総裁選に勝ち、「自民党の救世主」になれるか──。それは首相経験者への引退勧告でも、刺客作戦でもいい。父のように党内から猛反発を受けてもやるのだという修羅場を覚悟し、自民党が本当に生まれ変わると国民に示すことができるかどうかにかかっている。
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2024年9月20・27日号