衰勢が強まる教団にどこまで需要があるのか疑問も湧くが、とにかく池田氏のカラーを強調する戦略が透けて見える。
8月の式典で原田氏は、大阪事件につながる選挙活動中の1956年、池田氏が「大福運の関西城をつくる」と宣言していたと前置きし、「師恩に報いる勝利の前進を」と檄を飛ばしている。生前の「永遠の師匠」の発信は、今も組織を動かす力なのだ。
創価学会執行部にとってはそうだが、元本部職員はこう解説してくれた。
「香峯子さんはじめ池田家の方々は、粛々と相続を済ませ、もう静かに過ごしたいと願っているはず。家族葬で荼毘に付したことにもそれは表われていると思います」
とはいえ自宅の登記の日付が池田氏の神話と紐づいているあたりに、学会組織とは切っても切れない池田家の立ち位置が滲んでいるように思えてならない。
創価学会広報室にこの点を問うたが、「この種の質問にはお答えしない」と言うのみだった。
池田家と教団、政党の関係は今後どう動くのか。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。近著に『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社)。
※週刊ポスト2024年9月20・27日号