印象最悪キャラでも「断る選択肢はなかった」
実は出演オファーが来た際、木下は原作漫画を読んでおらず、役柄については「ぬらりひょん……妖怪役か」という認識だったという。木下の役柄は一家に寄生する下着姿の中年男性だ。物は投げるし、お供物を手づかみで貪る。
「僕のイメージが最悪で、少しでもよくせなあかんなって思ってるなかで、『もっと悪なるやないか』と思ったんです(苦笑)。ただ、台本、原作がめちゃくちゃ面白かったし、世の中で見つかってないだけで、こういう家庭があってもおかしくないというリアルがめちゃくちゃ怖かった。世間の皆さんが抱いている僕のいまの印象なら、逆にちょうどハマるんちゃうかな。確実に、完璧にやり切ったらバズるんちゃかなと。そうやって意識がどんどん変わっていった」
だが、たとえどんな役でも「僕の中で“断る”なんて選択肢はなかった」という木下。それは仕事がほしかったからというわけではなく、今回の出演に至った経緯だ。きっかけは、2019年に発覚したパワハラ騒動で謹慎していたとき、X(旧Twitter)にきた一件のDMがきっかけだった。
「ある有名ゲーム雑誌の元編集長の方で『僕はファンです。とはいえ、木下さんがやってしまったことは反省すべきだと。でも再出発でお力になれるようなことがあれば言ってください』って。無茶苦茶嬉しかったんですよ。
で、実際にお会いして、その人のアドバイスでピアノを習い始めたりとか。その人と動画を撮るようになってYouTubeと向き合ったり……」
木下は元編集長について「メンタルの恩人」と幾度となく繰り返す。そんな恩人から今回の出演のオファーが来たので、木下には即答以外の選択肢はなかった。
「やっぱコンビでね、こうやって不祥事起こしてしまって。ドラマとかCM。うん、やっぱ遠い話になってしまったわけですよ、僕からしたら。で、もうそこはちょっと諦めなあかんのかなと思ってたところでもあったので、この立ち位置でやらせてもらえるっていうのは、すごく、こう大きい。一生忘れない思い入れのある作品になるんやろうなと思ってます」
取材の最後、こう本音を吐露した木下。今後の「俳優・木下隆行」の活躍を期待したい。