近ごろはアルバイトに応募するとき、自分の身分証の写真をLINEなどで送信することも珍しくないそうだ。そのためか、その応募先が闇バイトであっても抵抗なく免許証などの画像を送ってしまう。その結果抜けられなくなり、よく考えないまま闇バイトに加わった人たちが起こしている最近の犯罪は、社会にとってどんな脅威なっているのか。ライターの宮添優氏が、思慮が浅い者たちによる強盗事件の増加についてレポートする。
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「正直、またかという印象です。毎日のように報じられているのに、まだ闇バイトに騙されるようなレベルの若者がこれほどいるのか、ということも絶望的ですが、連中がまだ”ロレックス”を狙っていることにも驚きます」
こう話すのは、貴金属展などが密集する東京・御徒町の時計店男性店主(60代)だ。8月31日に神奈川県厚木市の質店が、さらに9月3日にも鎌倉市の質店が、それぞれ2人組の強盗被害に遭った。厚木では実行犯役の男が居合わせた住人などに取り押さえられ逮捕。後日、運転手役を自称する男が出頭し逮捕された。鎌倉でも、店主に取り押さえられた男や逃走した男らが逮捕され、全員が「闇バイト」に応募したという旨の供述している。
ロレックスを盗んでも割に合わない
銀座や上野、御徒町などでも高級時計や貴金属を狙った連続強盗事件が起きていたこともあり、こうした商品を扱う業者の間では、盗品時計のロットナンバーが共有されている。さらに、所轄警察暑や組合などの指導も入り、強盗対策を進めていた矢先、狙われたのは厚木や鎌倉といった「郊外」の店舗だ。
「盗品のロットナンバーは小売の同業者だけでなく、質屋などにもリストが配布されていて、買取の際に気をつけるよう徹底されています。ですから、換金がしづらい。もうロレックスを盗んでも割に合わない、犯人たちはそう考えると思っていましたし、実際に強盗事件はいっときの間、発生していませんでした。さらに、警察から指導が入り、防犯カメラを新たに設置したり、盗まれやすい高額な品を表から見えるショーケースに陳列しないなど、かなり対策をしていました。ほとぼりが覚めて、強盗対策の薄そうな郊外の質店を狙ったのでしょう」(時計店店主)
同じような見方は、事件を取材した大手紙社会部記者からも聞かれる。
「かつて都市部で相次いでいた強盗事件では、高額で転売しやすいロレックスや、人気のあるクロムハーツなどアクセサリーが奪われていました。これらは盗品登録されているため、日本国内では転売が難しい。そこで、盗品を中国へ流していると見られていましたが、しばらく途切れていたようでした。この換金ルートが最近復活したのか、強盗対策を厳しくしている都内や繁華街の店舗ではなく、新たに郊外を狙うようになって最近の事件が起きたのでしょう。今でも、まだ郊外の店舗では表から見えるショーケースに堂々とロレックスを陳列しており、事前の下見も行いやすい」(大手紙社会部記者)