米テレビ界最高の栄誉とされる第76回エミー賞。日本の戦国時代を舞台にした『SHOGUN 将軍』が連続ドラマ部門の作品賞をはじめ、技術系部門でも編集賞や撮影賞など14部門で受賞、単年では史上最多の18冠に輝いた。主演の真田広之は、連続ドラマ部門主演男優賞、アンナ・サワイも主演女優賞を受賞。日本人俳優として初の快挙となった。
この作品のプロデューサーも務めた真田は授賞式で、「これまで時代劇を継承して支えてくださったすべての方々、そして監督や諸先生方に心より御礼申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を越えました」と日本語でスピーチした。このドラマのファンはもちろん、時代劇を愛してきたファンも胸が熱くなったに違いない。
真田の時代劇歴は長い。
1969年、『水戸黄門』第一部に子役で出演。粋な渡世人(渡哲也)とも出会っている。そのころから、太秦の東映京都撮影所の斬られ役さんやスタッフに「ひろくん」と親しまれていたという。千葉真一がアクション監督を務めた1980年の初主演作『忍者武芸帖 百地三太夫』では、高さ25メートルの城の天守閣から飛び降りるというアクションを披露して、観客を驚かせた。以降、80年代には、深作欣二監督の『魔界転生』、薬師丸ひろ子と共演した映画『里見八犬伝」やドラマ『影の軍団」シリーズなどで活躍、1991年、大河ドラマ『太平記』に足利尊氏役で主演した。
私は、1997年の主演作、NHK『新・半七捕物帳』を取材したが、現場でよく耳にしたのは「真田さんはスタッフとよく話をする」ということだった。岡っ引きの十手の長さにこだわり、殺陣では自らアイディアを出すこともあった。当時から、製作者的な目線があったのだと思う。