自民党総裁選は世論調査で人気の高かった小泉進次郎・元環境相と石破茂・元幹事長の一騎打ちと見られていたが、告示後に構図が激変した。高市早苗・経済安保相が党員・党友の支持を急速に拡大させている。まさに“高市現象”が起きているのだ。【全3回の第2回。第1回から読む】
アベノミクスの継承
“高市現象”は経済界にも波及しているようだ。
東京商工リサーチが行なった総裁選の企業向けアンケート調査(回答5921社)によると、「日本経済・自社ビジネスの発展に寄与すると思う」候補のトップは高市氏(1447社)で、2位の石破茂氏(1005社)、3位の小泉進次郎氏(492社)に大差をつけた。
その大きな理由が経済政策だ。
日本経済は日銀の利上げをきっかけに急激な円高が進み、好業績が続いていた輸出企業が業績悪化に転じると予想され、株価は大幅下落。本格化した賃上げも景気後退すれば今後は期待できなくなると懸念されている。
そうした状況だからこそ、高市氏と他の総裁候補の経済政策の違いが際立って見えるのだろう。
高市氏は、「金利をまだ上げてはいけない。企業が設備投資をしにくくなる」と日銀の利上げに反対。さらに「緩やかに物価が上がり、給料も上がり、消費が増えるまでは財政出動をしっかりとして、経済を強くしないといけない」と積極財政の主張を鮮明にしている。
他の総裁候補たちは「所得倍増」「増税ゼロ」などのフレーズを掲げるものの、高市氏ほどはっきりと積極財政路線ではなく、インパクトが弱い。財務省との関係が深く、正反対の「緊縮財政」路線に向かうと見られる候補も多い。
産経新聞元論説委員(現・特別記者)の田村秀男氏が指摘する。
「積極財政はデフレ脱却を重視するアベノミクス路線の継承ということです。デフレはお金が市中に回らなくなることで生じる。そこで政府が積極財政でお金を供給することで、企業の仕事が増え、売り上げが伸びれば賃金も上がり、株価にもプラス。ところが、総裁候補には財務省寄りの財政再建派が多い。積極財政で財務省と戦う姿勢なのは高市氏だけでしょう」