ドラマの原作はジェームズ・クラベルの小説『SHOGUN』(1975年)で、1980年に『将軍 SHOGUN』として一度映像化された。真田さんが演じた吉井虎長を三船一郎さん、アンナ・サワイが演じた鞠子を島田陽子さんが演じた。製作はもちろんハリウッドで、豪華絢爛さやスケールの大きさが話題になったが、映像のあちこちには外国人が見たい日本、外国人が思い浮かべる日本の姿がみられた。
だが『SHOGUN将軍』では、立ち居振る舞いや所作、話し方、衣装や小道具、大広間の襖、庭の造作に至るまで、本物へのこだわりがすごいと評されているだけに、へんてこ日本やなんちゃって日本のようなところはみられない。海外で作られた日本の時代劇によくあるおかしな日本語や変な衣装や小道具が気になって、ドラマを見る気が失せることもない。おかしな日本への思い込みを本物志向の映像で修正していく。『SHOGUN将軍』は新たな「真実性の錯覚」を作るきっかけになるのではないか。
言葉でも同じことがいえる。海外の映画やドラマを字幕で見るのに慣れた日本と違い、米国人は映画を英語字幕で見ることになじみが薄いそうだが、そこをあえて日本語にしている。映像の約7割が日本語で、その言葉に違和感はない。派手なチャンバラや迫力のある合のシーンはないが、戦略的な駆け引きを中心に重々しくじっくりと進んでいくドラマを日本語で楽しめた。
もちろん、『SHOGUN将軍』で描かれていることは、史実をモデルにしたフィクションだ。その本物志向によって生じ始める錯覚によって、過去の思い込みが修正され、おかしな日本イメージが少しずつ変わっていくのだろう。
海外に拠点を移して20年という真田さんが、オーセンティックを求めて闘ってきた日々のドキュメンタリー映像が見てみたい。