「はたして今の時代に照らし合わせた指導法で、チームを勝利に導くことができるのだろうか」──かつて、野村克也氏の率いるヤクルトスワローズの一軍で活躍。日本ハムファイターズ、阪神タイガースを渡り歩いてからの引退後は、コーチや監督として野球への情熱を注いできた橋上秀樹氏は、著書『だから、野球は難しい』(扶桑社新書)でこう問う。
2013年開催の第3回WBCでは戦略コーチを務め、2021年からはオイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブを監督として率いる橋上氏。その半生にも触れた同書には「野球の持つ魅力や奥深さ、難しさ」が凝縮されている。
かねてより「4番こそがチームの最強打者」というイメージが一般的だが、橋上氏は「そんなことはないと思っている」と持論を展開する。
理由はシンプルで、試合の展開によっては「4番打者がイニングの先頭を打つこと」があるからだ。一方で「8番打者が1アウト満塁の絶好のチャンスの場面で回ってくること」もあり、これをふまえると「誰をどういった並びにするのか」が重要だという。
自身のチームに「相手投手と相性のいい打者」が4人いたらどうか。相手チームに打ち勝つならば4人を並べたくなるところだが、橋上氏はそれぞれの間に「相性の悪い打者を挟むこともアリなんじゃないか」と考察する。
たとえば、展開によっては「相性のいい打者」が続けてチャンスメイクをしたとしても、得点に繋がらず「相性の悪い打者」が並ぶ打順となってダブルプレーなどで一気にチャンスを失うリスクもある。ならば、間にあえて「相性の悪い打者」を挟み、ランナーを走らせるための「送りバント」や「ヒットエンドラン」で「攻撃パターン」の広がりに期待するのは、いたって合理的というのが橋上氏の考えだ。