「前世は古代エジプトのファラオで、王女はその妻だった」とベレット氏は主張しているから前世は見えるということらしい。過去には離婚歴や逮捕歴もあるという。マッタ・ルイーセ王女も「子供の頃から天使と交信している」と話すほど、スピリチュアルを信じている人物。前世はファラオだけでなく、「自分は普通の人間ではない。爬虫類とアンドロメダのハイブリッド」というベレット氏に魅かれ、心を癒され、自分より強いパワーを持つベレット氏と歩めば、自分たちの愛とスピリチュアルで世界を変えられると思ったのだろう。因縁や宿縁、輪廻転生といった前世からのつながりが、同じ魂と持つ者として王女にとって大きな意味を持ったようだ。にわかに信じがたく、後付けされた話のようにしか聞こえないが、前世は誰にも証明できない。
日本でも前世からの因縁や宿縁、霊媒やスピリチュアルがブームになった時期がある。霊能力者として活躍した冝保愛子さんは数々の番組に出演したし、米国の女優、シャーリー・マクレーンさんは著書『アウト・オン・ナ・リム』で、不倫の恋に苦しんだ相手が前世から関係があったと知り、魂を解放させる旅について書きベストセラーとなった。芸能人や有名人などセレブといわれる人達の中には、自分の悩みを誰にも打ち明けられない人もいる。そんな時、自分をさらけ出すことができ、前世や魂のレベルで悩みや問題の謎解きや分析をしてくれるだろうスピリチュアルガイドは、長いトンネルの先に見える一筋の光なのかもしれない。
心理学には「トランスパーソナル心理学」という分野がある。自分個人、個体を超えた世界や宇宙とのつながりによって、本当の自分に出会い目覚め、成長していくというもの。健康な側面から人を捉えて自己実現を求める心理学者マズローの人間性心理学に、魂やスピリチュアルを含めた心理学なのだという。だがトランスパーソナルには金儲けの道具にもなりやすいという側面はある。王女は天使と交信できる方法を教えるという講演会を行い収入を得て、ベレット氏は自身が生き返ったことがあるとして「命を救う」という高価なメダルを販売。王女は王室の商業利用などと批判を受け2022年、公務から離脱した。
どこまでが本当なのかは本人にしかわからない。沖縄には”ユタ”と呼ばれるシャーマンがいて、地元の生活に根差し共存していると聞く。住民は病になればユタに癒しと救いを求めることから、現地では「医者半分ユタ半分」と呼ばれているらしい。ベレット氏は人を癒すシャーマンなのか、地位と金が目的の似非シャーマンなのか。王女が答えを見つける日はくるのだろうか。