「うちの子の何が悪いの!?」──9月18日朝、中国広東省深セン市で日本人学校に通う10才の日本人男児が登校中に刃物を持った男に襲われ、のちに死亡した事件で、男児の母親はそう絶叫した。男児は腹部からは腸が見えるほど深い傷を負っていたといい、男の強い殺意が窺える。
その日は、満州事変の発端となった柳条湖事件から93年目にあたることなどから、反日感情が事件の背景にあるとされているが、凶行に至る詳しい動機は明らかにされていない。一方で、ゆがんだ愛国心に突き動かされたという自らの突発的行為を、美談として滔々と語る者もいるようで……。
《反撃のチャンスはこれしかないとはっきり悟ったのです。その日のうちにやらなければ、後でまたチャンスが巡ってこないかもしれない。そのときに、中国に対する侵略戦争で辱めを受けた無数の犠牲者のために声を上げたいという強い衝動が、国家正義のために立ち上がりたいという内なる力が、私の背中を押しているように思えたのです》
中国共産党北京市委員会の機関紙「北京日報」が運営するニュースサイトで、こう発言したのは、この8月「NHK放送ジャック事件」を起こした張本人、胡越こと胡晋泉(48才)だ。
前代未聞の事件を振り返ろう。
8月19日13時過ぎ、NHKのラジオ国際放送の中国語ニュースで、同日に見つかった靖国神社の石柱の落書きについて伝えていた男性スタッフが、「【軍国主義】【死ね】などの抗議の言葉が書かれていた」などと、原稿にはなかった文言を読み上げたうえ、尖閣諸島が中国の領土であると主張。さらに「NHKの歴史修正主義宣伝とプロフェッショナルではない業務に抗議する」としたうえで、「南京大虐殺を忘れるな」「慰安婦を忘れるな」などと英語で発言。約22秒間にわたって不規則発言を続けたのである。
「この男性はNHKの外部委託団体のスタッフで、中国籍。ラジオ番組で原稿読みを担当していたといいます。この時、スタジオの副調整室には、外部ディレクターとNHK職員のデスクが控えていましたが、あまりに急なことで、マイクの音量を切るなどの対応は取れなかったようです」(全国紙社会部記者)