芸能

【対談・風間杜夫×堀ちえみ】今振り返る“大映ドラマ”の傑作『スチュワーデス物語』でのこだわり「一語一句くっきり話す」「内緒話も大声」 

歌手・タレントの堀ちえみ(左)と俳優の風間杜夫(右)

歌手・タレントの堀ちえみ(左)と俳優の風間杜夫(右)

 著名人が憧れの“あの人”と対談するシリーズ「私の推しメン対談」。今回は歌手・堀ちえみが俳優・風間杜夫にラブコールを送った。この2人といえば、日本航空(JAL)のスチュワーデス(客室乗務員)訓練生と教官による恋と成長を描いたテレビドラマ『スチュワーデス物語』(TBS系、1983~1984)で共演し、最高視聴率26.8%を記録するなど、大人気となった。そんな“大映ドラマ”の傑作に出演した2人が、当時を振り返る。【全3回の第2回。第1回から読む】 

大映テレビの熱意とこだわりが生んだ傑作 

風間:台本も野添さん(『スチュワーデス物語』のプロデューサーを務めた大映テレビの野添和子さん)がよく手を入れていたっけ。“このせりふはなんだ? これをやるのか?”って思わせる独特な言い回しが多くて最初は戸惑ったんだけど、覚悟を決めたらどんどん演じるのがおもしろくなっていった。 

 泳ぎの訓練を路上でするシーンなんて、いまでも忘れられない。「おれをボートだと思ってここまで来い!」って村沢教官(風間)が言うと、千秋(堀)が路上をクロールしながら近づいてくる。水中じゃなくて路上だよ、すごい演出。何をやらされているんだって思ったけどね。 

堀:私もそのときのこと、よく覚えています。撮影後、風間さんが「おれってえらいよね」っておっしゃったんですけど、路上でクロールをしたのは私なんだから、私の方がもっとえらいと思いました(笑い)。 

風間:泥臭いんだけど、ああいう演出こそが人気を呼んだ。 

堀:はい。“大映ドラマ”はコンセプトがしっかりしているんですよね。台所で働いているお母さんはテレビを見られない。音だけでも物語がわかるように、あえて説明的なせりふを多くして、一語一句はっきりくっきり話す。内緒話まで大声。アドリブもダメでした。 

風間:そうそう、アドリブを入れるのは石立鉄男さん(享年64)と秋野暢子さん(67才)くらい(笑い)。 

堀:私、大映ドラマの出演は初めてで……。とにかく周りに迷惑をかけないよう無我夢中でした。訓練生役のお姉さんたちはやさしかったし、風間さんも「大丈夫、何度でもつきあうよ」って言ってくれて。風間さんにそう言われると安心できました。 

風間:緊張するとせりふが出てこなくなるから、リラックスしてほしかったんだよね。そういえば、監督から「あえいで」って言われて苦戦していたよね。 

堀:そうそう。「教官(あえぐ)私(あえぐ)がんばります(あえぐ)」という感じでせりふを言う。でも何回もやっていたら「こなれたらだめ」って(笑い)。 

風間:芝居をするんじゃなくて、ちえみちゃんのまんまでよかったんだろうね。 

堀:当時はそれがわからなかったんですよね……。こだわりといえば、せりふや演出だけでなく衣装や訓練内容がすべて本物だったのもすごかったですよね。JALの訓練センターを使わせてもらって。 

風間:あそこの屋上での撮影は、寒かったよね~。 

堀:はい。それと、11月半ばに静岡県・沼津の海で私が溺れるシーンを撮ったときもすごい寒かった。風間さんが泳いで助けにきてくれて、人工呼吸をしてくれるっていう……。 

風間:ちえみちゃんの唇を初めて奪ったのは、ぼくだよね、多分──(笑い) 

堀:あれは人工呼吸ですから(笑い)。ちゃんと専門家から救難訓練の指導を受けて臨んだんですよね。 

風間:でも世の男性陣は穏やかじゃなかったかもね。ぼくの息子は当時幼稚園児だったんだけど、千秋ちゃんが大好きでね。ある回で、ぼくが演じる村沢教官が雨の中、千秋を待たせるシーンがあったんだけど、ちょうどそのシーンが放送されていたとき、ぼくが家に帰ってきたの。そうしたら、「お父さん、どうして千秋ちゃんを待たせるの? 早く行ってあげて!」って息子に怒られたんだよ。 

堀:現実とドラマが混ざっちゃったんですね(笑い)。 

風間:影響力の強い作品だったよね。放送終了後、かなり経ってから高校生たちがぼくを見て「教官だ!」って言うわけ。ぼくが教官をやっていた頃には生まれていない子たちだよ。再放送やDVDでも見たのかな。 

堀:私もいまだに「あのドラマを見てCA(キャビンアテンダント)になりました!」なんて言われることがあって、涙が出そうになります。8か月の撮影期間中は、人生でいちばん忙しかったんですけど、いい思い出しかありません。最終回の撮影で、風間さんもセットの隅で泣いていましたよね。 

風間:皆大きく巣立ってよかったって感慨深くて……。 

第3回につづく第1回から読む) 

【プロフィール】 

風間杜夫/俳優。1949年東京都生まれ。13才まで子役として活躍。1972年、日活ロマンポルノから“風間杜夫”としてデビュー。1974年、大河ドラマ『勝海舟』(NHK)でテレビドラマ初出演。以降、映画『蒲田行進曲』をはじめ話題作に出演。2010年には紫綬褒章を受章。[出演スケジュール]10月11~17日、東京・下北沢本多劇場にて『風間杜夫ひとり芝居 カラオケマン ミッション~インポッシブル ~牛山明、バンコクに死す』を公演予定。 

堀ちえみ/歌手・タレント。1967年大阪府生まれ。15才のとき『潮風の少女』でアイドル歌手デビュー。小泉今日子や中森明菜らと同期で「花の82年組」といわれた。1983年にテレビドラマ『スチュワーデス物語』(TBS系)で“大映ドラマ”に初主演し、一躍人気に。2019年、口腔がんのため芸能活動を休業して療養。2020年1月3日、芸能活動復帰。[出演スケジュール]10月29日、東京・渋谷duo MUSICEXCHANGEにてライブ『CHIEMI STYLE 2024~Autumn~』を開催予定。 

取材・文/土田由佳 撮影/政川慎治 

女性セブン20241010日号 

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
NHKが、今年の出演者の目玉と期待したSnow Man(時事通信フォト)
《Snow Man、B’zの名前なし…》紅白歌合戦、目玉候補に次々と拒絶されNHK局全体がどんより 中森明菜は特別企画で出場に期待
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン