ブレない一社提供と希少価値の高さ
ここまで50年にわたる5つのシリーズで共通しているのは、資生堂の一社提供番組であること。
化粧品の会社だけあって「おしゃれ」という番組名がフィットしたほか、初代の『おしゃれ』では海外のファッションやトレンドを紹介するコーナーがあったり、2代目の『おしゃれ30・30』では最後に古館さんが「あなたにとっておしゃれとは?」とゲストに尋ねるシーンがあったりなどブランディングの工夫が見られました。
週替わりの美男美女がゲスト出演するほか、目を引くような美女たちのCMが流れることなども含め、『おしゃれ』シリーズは男女を問わず幅広い世代からの視聴を獲得。「おしゃれ」「美しい」というブランドイメージで資生堂と番組が一体化し、さらに年数を重ねることで他番組との差別化につながっていきました。
もう1つ、50年放送が続いた要因として大きいのは、年月を重ねるにつれて希少価値が高まっていったこと。時代は移り変わり、昭和時代には多かった“30分番組”がゴールデン・プライムタイム(19~23時)から消えていく中、相対的に『おしゃれ』シリーズの希少価値が高まっていきました。
さらに「純粋なトーク番組を長年続けてきた」という実績も、視聴者の視聴習慣を定着させている理由の1つ。トーク番組の主流が『踊る!さんま御殿』(日本テレビ系)、『酒のツマミになる話』(フジテレビ系)のようなグループトークに変わり、1人・1組のゲストを招いてスタジオで行われるものはゴールデン・プライムタイムから激減していきました。
その点、『おしゃれ』シリーズは、2023年春に『まつもtoなかい』(フジテレビ系、現在は『だれかtoなかい』に改題)がスタートするまで「唯一の純粋なトーク番組」として放送を続けることでブランド化に成功した感があります。
もはや『おしゃれ』シリーズは日曜夜の定番であり、「翌日の仕事や学校を控えて最後に見る番組」という人も多いでしょう。また、それは日曜夜に合う構成・演出を微調整しながら、50年にわたって一社提供を続けた資生堂のブレない姿勢への成果にも見えます。近年、同社の業績悪化を報じる記事も見かけますが、「日本人の美を彩るトップ企業として『おしゃれ』シリーズを継続してほしい」と思っている人は多いのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。