難敵となる可能性があるのはフィリーズだけではない。中でも警戒が必要なのはドジャースと同じ西地区のパドレスだ。対戦が実現すれば日本人対決が注目される。
「ダルビッシュ有が3番手として完全復活し、ノーヒットノーランを達成したディラン・シース、今季大化けしたマイケル・キングの3人がローテを形成。松井裕樹がロングリリーフで起用される投手陣は脅威といえるでしょう」(友成氏)
ドジャースはエースのジャック・フラーティ、山本由伸の順で投げるが、ケガによる離脱が相次いで3番手が不在。クローザーのマイケル・コペックの先発起用の可能性もあり、ファンからは“大谷の投手復帰”が熱望されるほどの窮状だ。
「ロバーツ監督は負傷者の穴を埋めるベンチワークの巧みさを持つタイプの指揮官ではない。試合に出られる大谷、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンらの打撃で点の取り合いを制していくしかない。
そうしたなかでドジャースがリーグ優勝した場合、ア・リーグからワールドシリーズに進出するのがどこのチームかも注目。ヤンキースが有力ですが、菊池雄星がいるアストロズも西地区を制して期待は大きい」(友成氏)
大谷と菊池の“花巻東対決”が世界一を決める舞台で実現する可能性もあるわけだ。
「50-50」の勢いを再び
大リーグ研究家の福島良一氏はナ・リーグMVPについて「ライバルとして好守備が光るフランシスコ・リンドーア遊撃手(メッツ)の名前が挙がるが、大谷のMVPは濃厚」と言う。
一方、ア・リーグのシーズンMVPは自身3度目の50本塁打を達成したアーロン・ジャッジ(ヤンキース)が有力だ。大谷とジャッジという、昨季まで毎年のようにア・リーグMVP争いを繰り広げた“好敵手”同士による世界一を懸けた直接対決も見られるかもしれない。当然、大谷のワールドシリーズMVPに立ちはだかる最大のライバルとなるだろう。
福島氏が語る。
「MVPには流れを変えたり、勝負を決める1打を放ち、チームの勝利に貢献したという強い印象が求められる。2009年の松井秀喜の時は世界一を決めた第6戦に5番DHで出場。4打数3安打、シリーズタイ6打点の大暴れ。シリーズで3本の本塁打を放ち、通算打率6割1分5厘で選出された。
ただし、エース級が投げる短期決戦は本塁打が出づらいため、大谷の盗塁も武器となる。史上初の『50-50』を達成したマーリンズ戦での6打数6安打、3本塁打、10打点、2盗塁という数字はインパクトも強く、シーズンMVPを決定づけた。そのバッティングと走塁ができればワールドシリーズMVPはぐっと近づく」
大谷が世界一となる瞬間を、ファンも待ちわびている。
取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2024年10月11日号