中国・深セン市の日本人学校に通う男児が殺害された事件を受け、中国政府は「偶発的な事件」「類似の事件はどの国でも起こり得る」と主張して幕引きを図っている。だが、事件の背景には反日感情の暴走を野放しにする習近平政権の存在があるとの指摘も多い。
深センでの事件が起きた9月18日は、柳条湖事件(1931年に柳条湖で日本の関東軍が南満州鉄道を爆破した事件。関東軍はこれを中国軍の仕業として出兵し、満州事変が始まるきっかけとなった)が起きた日で、中国では「国恥日」のうちの一つとされている。その日に合わせて日本人学校を狙ったのだとすれば、次に危ない“Xデー”はいつなのか。
中国情勢に詳しいジャーナリストで千葉大学客員教授を務める高口康太氏が言う。
「国家主席だった江沢民が1990年代に始めた愛国教育はその後どんどん強化され、9.18の柳条湖事件の日には空襲警報のサイレンを鳴らして知らしめる都市もあります」
反日感情が特に高まる日には、現地の領事館や日系企業から在住日本人や社員に向けて注意喚起のメールが送られてくることもあるという。事件当日の9月18日にもそれは送られていた。
在中国日本大使館のホームページにも「安全の手引き」として〈日本人が関与した歴史的事件が発生した日には反日感情が表面化する傾向が強い〉と、具体的な日付が明記されている。
「次に危ないと見られているのが、12月13日の南京事件追悼記念日です。1937年に日本軍が南京に入城した日ですが、2014年に『国家追悼日』の祭日に制定されました。
現在、在中国日本人の間では、日本人と見分けられないよう子供のランドセルをやめさせ、街中で日本語を話さないようにする自衛策が取られている。
さらに12月13日までに現地駐在社員に帯同する家族を帰国させようとする動きも活発化しています」(同前)
※週刊ポスト2024年10月11日号