大相撲界では、世代交代の波が強まっている。秋場所で優勝した大の里は、新入幕からわずか5場所で大関に昇進し、横綱への昇格を目指す。台頭する力士たちを、そして令和の大相撲を“平成の大横綱”はどう見ているのか。第65代横綱・貴乃花光司氏(52)が若手力士らについて語った。【全3回の第2回。第1回から読む】
尊富士にケガの懸念
若手の台頭では、秋場所で十両優勝した尊富士(25)もいる。春場所の優勝後は故障で休場が続いたが、来場所は再入幕も視野に入る。やはり立ち合いからの一気のスピード相撲が持ち味だ。
「幕内の上位でも、今場所の十両でのような相撲が取れればいいんですが、なかなか簡単ではないでしょう。一度幕内最高優勝をしているので、対戦相手も歩幅を掴んできます。大の里にも言えることですが、勢いでいって少し落ち目になった時、立て直しにあたって気をつけないといけないのは大きなケガ。晩年なら仕方がないが、若いうちにケガをするとその後の相撲人生に影響します」
春場所の尊富士は14日目に右足首にケガを負ったが、千秋楽に強行出場して優勝した。
貴乃花氏も、2001年5月場所で膝のケガを押して武蔵丸(現・武蔵川親方)との優勝決定戦に挑み、優勝した経験を持つ。勝負を決めた際の“鬼の形相”は大相撲史に残る名場面だが、その後は7場所連続休場。代償も大きかった。
「私も同じですが、尊富士としても逃げ場はあったでしょう。でも、強行出場して優勝したことが、彼の人生での大きな経験になるでしょうからね。あそこで休場して優勝できなかったとして、今後、優勝の機会に恵まれるかはわからないわけです。もちろん出たことでの休場もあったわけで、出るか出ないかどちらがよかったのか、こればかりはわかりません」