現役時代の貴乃花(時事通信フォト)

現役時代の貴乃花(時事通信フォト)

世代交代が進む令和の大相撲はどうなっていくのか

 ケガに苦しむのは、ひとり横綱の照ノ富士(32)も同じだ。夏場所は復活優勝したが、秋場所は全休。貴乃花氏も現役終盤は膝の大ケガにより長期休場を余儀なくされた。「毎場所、満身創痍になっていくものです」と振り返る。

「横綱はなるよりなってからが大変で、昇進と引退が一直線上にあり、それがどんどん近づいてくるという感覚。引き際も問われます。ボロボロになるまでやるか、準優勝ぐらいしてスッと引くか。もちろん理想は優勝しての引退でしょうが……」

 自身の引退場所は4勝4敗1休の成績だった。

「ボロボロになる一歩手前でした。そこの引き際が難しい。下から上がっていく時は頭から当たって猪突猛進で、獅子奮迅の荒れ狂う相撲でいいが、横綱は負けられない。そういう意味でも照ノ富士は大変だと思います。

 その照ノ富士には日本人的な骨組みを感じますね。たまたまモンゴル出身の照ノ富士が横綱になっているが、日本的な心でやっているように見えます。よくやっていると思いますよ。気骨があるというか、でなければ序二段まで落ちてからの復活なんてできません」

 横綱や大関が引き際の判断を迫られ、世代交代が進む令和の大相撲はどうなっていくのか。

「学生出身力士が多くなると、世代交代が早まると思うんです。昔は長い下積みで土台を作り、“幕内10年”だった。それが学生出身力士は22~23歳から入門して5年ほど幕内で活躍すると次の世代が入ってくる。

 大の里が凄くいい状態で大関に昇進し、横綱になると言われているが、すぐに次の学生出身力士が出てくると思う。幕下付け出しスタートで、幕内上位に上がるまでに何年もかからない。もちろん中学出身でじっくりと土台を作って長く幕内で取れる力士も出てくるでしょうが、比率は変わるし、回転も速くなる。今が大相撲の過渡期なのは、間違いないですね」

 平成の大横綱は、令和の大相撲にさらなる変革の大波が訪れることを予見していた。

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聞き手:鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。スポーツ、社会問題を中心に取材活動を重ね、野球界、角界の深奥に斬り込んだスクープで話題を集めた。近著に『審判はつらいよ』(小学館新書)。

※週刊ポスト2024年10月11日号

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