秋場所で優勝した大の里は、新入幕からわずか5場所で大関に昇進。大相撲界において、世代交代が加速している。その一方で、横綱不在の場所が多い中、長年大関として活躍した貴景勝が引退を発表した。“平成の大横綱”第65代横綱・貴乃花光司氏(52)は変わりゆく令和の大相撲をどのように見ているのか。【全3回の第3回。第1回から読む】
貴景勝に必要だったもの
新世代が台頭すれば、上の世代が退く。貴乃花部屋の愛弟子だった貴景勝(28)は、秋場所で10勝をあげての大関復帰を目指したものの、初日から連敗を喫して途中休場。現役引退を表明した。大関在位30場所、優勝4回という実績を残したが、ケガにも苦しんだ。押し相撲一辺倒で安定感に欠けるとの指摘も多かった。
「(押し相撲は)難しくないんですよ。ただ、本人が難しく考えてしまっていたと思う。テーピングとかね、ああいうのをすることを私は教えてきていないので。体重も増えて仕方なくやっていたんでしょうが、1年前に(テーピングが)取れないとこういう事態になるだろうなと感じていた。その方向にいきました。それは仕方がないことです。本人も悩みながらやっていますからね」
引退の瀬戸際となっても、貴景勝から連絡はなかったという。
「ないというか、ないようにさせています。体の使い方が基礎に戻ればよかったんですけどね。首の故障が原因ですが、あの子(貴景勝)は背丈がなく、横に太い力士ですから、頭からガンガンいかないと相手に衝撃を与えられない。でも、相撲は頭からガンガンいくだけのものじゃない。そこは体格に関係なく、技術が必要になる。それを稽古場で鍛錬していかないといけない世界なんです。
あの子が四つ相撲を取り入れるのは無理でした。四つ相撲を取ったら一発で大きなケガをして終わっていた。あの体格で横綱を目指すには突き押しに徹するしかなかった」