ライフ

オバ記者、67才にして胸にズシン「ちゃんと命をいただく人になろうと思い至った」

動物の命をいただくということについて、オバ記者が綴る

動物の命をいただくということについて、オバ記者が綴る

 日常的に食べている肉だが、食肉になる過程として動物を解体する「屠畜」がある。屠畜の仕事に就く人の声から、動物の命をいただくということについて、『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が綴る。

 * * *
 いやぁ、ウカツだったわ。まさかこんなに重たい鉛を胸に打ち込まれるとは夢にも思っていなかったわよ。

 数か月前、「私がずっと会いたかった人の講演会があるから聞きに行こうよ」と誘ってきたのは、刑務所の管理栄養士をしている黒柳桂子(55才・“柳”の正式な表記は“木へん”に“夕”に“ふしづくり”)だ。『めざせ! ムショラン三ツ星』の著者で、最近はメディア露出も多い。彼女が会いたかった人は、坂本義喜さん。1957年、熊本県生まれの食肉解体作業員だ。

 講演会当日、合流した彼女から「とにかくいま、この本を読んで。短いからすぐ読めるでしょ」と一冊の絵本を渡された。『いのちをいただく』(文・内田美智子、絵・諸江和美、監修・佐藤剛史、西日本新聞社刊)という本だ。

 この絵本は熊本県の食肉加工センターに勤務する坂本さんの体験談を基にしたもので、物語は坂本さんと息子さんが食肉加工センターの仕事について語り合う場面から始まって、牛の「みいちゃん」を同センターに運び込んだ人たちと出会う場面へと展開し、坂本さんは「動物の命を私たちはいただき、生かされている」ことの意味を改めて問い直す。

 講演会場の三重県津市・白山市民会館には、小さな子供を連れた母親など中年女性が100人ほど集まっていた。

「私の仕事は食肉センター解体作業員。はっきり言えば屠畜業ですね」

 ポロシャツに綿パンのラフなスタイルの坂本さんはサラッと話し出した。

「両親がその仕事をしていたんですけど、牛馬の血を浴びたまま帰ってくる。それが子供心に嫌で嫌でたまりませんでした」

関連キーワード

関連記事

トピックス

“令和の小泉劇場”が始まった
小泉進次郎農相、父・純一郎氏の郵政民営化を彷彿とさせる手腕 農水族や農協という抵抗勢力と対立しながら国民にアピール、石破内閣のコメ無策を批判していた野党を蚊帳の外に
週刊ポスト
緻密な計画で爆弾を郵送、
《結婚から5日後の惨劇》元校長が“結婚祝い”に爆弾を郵送し新郎が死亡 仰天の動機は「校長の座を奪われたことへの恨み」 インドで起きた凶悪事件で判決
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
「最後のインタビュー」に応じた西内まりや(時事通信)
【独占インタビュー】西内まりや(31)が語った“電撃引退の理由”と“事務所退所の真相”「この仕事をしてきてよかったと、最後に思えました」
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬・宮城野親方
【元横綱・白鵬が退職後に目指す世界戦略】「ドラフト会議がない新弟子スカウト」で築いたパイプを活かす構想か 大の里、伯桜鵬、尊富士も出場経験ある「白鵬杯」の行方は
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン