エミー賞を受賞した米ドラマ『SHOGUN 将軍』を例に挙げるまでもなく、映像作品においてその世界観を忠実に再現する衣装の存在は作品の評価を高めることにつながる。豪華絢爛な「ド派手」衣装が話題になった映画『翔んで埼玉』シリーズ(2019年、2023年)もその一つだ。同シリーズの衣装および人物造形には、「人物デザイナー」柘植伊佐夫氏の存在が不可欠だった。最新刊『ヒット映画の裏に職人あり!』が話題の時代劇・映画史研究家、春日太一氏が柘植氏に聞いた(以下、同書より抜粋・再構成)。
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実写作品において、俳優が一人の登場人物としてカメラ前に立つまでには、顔はメイクアップ、頭髪はヘアメイク、衣装は服飾デザイナーと、それぞれ異なるスタッフたちの手を経なければならない。ただ、近年はそれを統括する立場で「人物デザイナー」というスタッフがクレジットされることも見られるようになってきた。その第一人者が、柘植伊佐夫氏。『龍馬伝』(二〇一〇年)、『平清盛』(二〇一二年)、『どうする家康』(二〇二三年)といった大河ドラマから、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(二〇二三年)、『翔んで埼玉』シリーズ(二〇一九年〜)といった漫画原作映画まで幅広く手掛ける柘植氏に、「人物デザイナー」の仕事の全貌をうかがった。