国会論戦をすっ飛ばして一気に解散・総選挙へと突き進む石破茂・首相。総裁選で党の“顔”を代え、ボロが出ないうちに選挙を乗り切ろうという腹だが、有権者はそう甘くはない。永田町で50年以上にわたり政治取材を続け、数々の選挙で当落予測を的中させてきた野上忠興氏(政治ジャーナリスト)が、全289小選挙区の最新情勢を詳細分析。その結果は衝撃的なものとなった。【全3回の第1回】
石破首相が選挙を急ぐ理由
前代未聞の解散だ。石破首相は国会召集前日、まだ首班指名前で組閣もしないうちに「10月27日に総選挙を行ないたい」と衆院解散を表明した。
総裁選では「予算委員会を開いて野党の方々と論戦を交わした上で国民に判断いただく」と語っていたが、その予算委員会さえ開かない。
そればかりか、解散を決めてから霞が関に経済対策、すなわち選挙向けのバラマキの検討を指示するというチグハグぶりなのだ。
首相がそこまでして選挙を急ぐ最大の理由は、「野党の選挙協力」がまとまるのを恐れているからにほかならない。
立憲民主党の野田佳彦・代表は、野党各党に自民党の裏金議員への対立候補一本化を呼びかけている。日本維新の会の吉村洋文・共同代表も「裏金議員のところは一本化して勝負をかけていくというのは筋が通っている」と前向きだ。
実現すれば、自民党が大苦戦を強いられるのは間違いない。選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「立憲、維新、共産党など野党各党はバラバラで候補者擁立を進めてきたから、多くの小選挙区は候補者乱立状態です。一本化されれば自民党には脅威だが、そのためには野党間で話し合ってどの選挙区にどの党の候補者を出すかを調整し、すでに立候補が決まっている候補者を説得して降りてもらわなければならないから時間がかかる。
石破首相は野党にその候補者調整の時間を与えないために、いきなり解散を選んだ。野党候補が乱立して潰し合ってもらったほうが、自民が有利になると考えたわけです」
裏金議員に野党統一候補という「刺客」を送らせないためになりふり構わず解散に走ったのだ。
しかし、「正論」を売りにしてきた石破氏が予算委員会で野党と論戦を交わして国民に政権の考え方を示すことより、党利党略を優先したことでメッキが剥がれた。
石破首相の短期決戦の賭けはどんな結果が出るのか。