国会論戦をすっ飛ばして一気に解散・総選挙へと突き進む石破茂・首相。総裁選で党の“顔”を代え、ボロが出ないうちに選挙を乗り切ろうという腹だが、有権者はそう甘くはない。永田町で50年以上にわたり政治取材を続け、数々の選挙で当落予測を的中させてきた野上忠興氏(政治ジャーナリスト)が、全289小選挙区の最新情勢を詳細分析。その結果は衝撃的なものとなった。【全3回の第2回。第1回から読む】
萩生田、下村、丸川…大苦戦の裏金議員たち
最大の焦点は裏金議員への審判だろう。なかでも注目されるのは旧安倍派幹部たちの情勢だ。
裏金問題で「1年間の党員資格停止」処分を受け、旧統一教会問題とも接点があった下村博文・元文科相(東京11区)は無所属での出馬となるが、大逆風を受けて苦戦。
「東京11区は立憲と維新から候補者が出馬を予定しているが、候補者一本化ができなくても下村氏は厳しい。無所属で比例代表への重複立候補ができないため、小選挙区で敗北すれば議席を失うことになる」
同じく裏金と旧統一教会問題のW逆風にさらされているのが萩生田光一・元政調会長(東京24区)だ。
「高市早苗氏を幹事長にすべきだった」と石破人事を批判しているが、自分の足元ではもっと大きな有権者の批判の火が燃えさかっている。
萩生田氏は参院選で新人候補を旧統一教会の施設に連れて行くなど、「教団の代理人」的な行動が批判された。裏金問題でも2728万円もの裏金を「事務所の机の引き出し」に現金で保管していたなどと釈明したにもかかわらず、「役職停止1年」という比較的軽い処分で逃れた。前回の総選挙では東京24区での候補擁立を見送った立憲民主が、今回は萩生田氏を標的に旧統一教会問題追及で知られる元職の有田芳生氏という“刺客候補”を送り込んだ。
「今年1月に行なわれた地元の八王子市長選では萩生田氏が擁立した自公推薦の新人が裏金批判のあおりを受けて大苦戦に陥った。あの頃よりさらに批判は強まっている。市長選は小池百合子・都知事の支援で自公推薦候補がなんとか当選したが、総選挙で小池知事が萩生田氏を応援するとは思えない。公明党・創価学会も、旧統一教会との結びつきが発覚した萩生田氏から離れている。当選は容易でないでしょう」