ふらっと入った食堂で「文化の一撃」
2015年、NHKのドキュメンタリー『アジアハイウェイを行く』の撮影でジョージアを訪れました。首都トビリシのホテルに着いたのは夜で、撮影は翌朝。疲れていたので寝てしまうことも考えたのですが、何か適当なものでいいから腹に入れておこうと地元の食堂に入りました。
メニューの冊子はありましたが、ジョージア文字で書かれていて読めません。小さな写真を見て、ピザみたいな料理をお願いしました。「まあ、ピザなら大失敗もないだろう」という安直な発想です。しばらくして来たのは、舟形のパンにたっぷりのチーズ、真ん中に卵。
この「ハチャプリ」が、ちょっと衝撃的においしかった。ぼくはジョージアについて、事前には何も調べていなくて、だから口にした瞬間に「文化の一撃」をくらって、家庭の味だと直感しました。これがジョージアか。各家庭にそれぞれのハチャプリがあるんだと思って、感激して。
何が違うのかな、チーズのコクは特徴的かもしれません。パンの生地も、小麦の風味がしっかりしていて……でも言葉では説明できないです。ぼくは、日本ではご飯を食べることが多いのですが、このパンは特別です。実際、撮影中はレストランでのしっかりした食事より、露店とか食堂のハチャプリばかり食べていました。文字通り、ジョージアでの最初の晩餐です。