SNSでは有名人になりすます怪しいアカウントも少なくない。体験取材を得意とする『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が、そんなアカウントとメッセージのやり取りをした。そこから見えてきたものは何か、オバ記者が綴る。
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70代の友人Y子が怒っている。
「SNSの友達申請を受けたら、その相手がいきなり、『夕飯は何を食べた?』だって。頭に来たからすぐブロックしたわよ」と。いやいやソレ、世界のどこかからAIを使って無差別に発信しまくっている投資詐欺犯の常套句だって。
「最近はAIの性能がよくなっているから、ついついだまされる人もいるみたい」とY子に言ったものの、実は私も最近、ある人物を騙った“AI人間”に振り回されっぱなしだったの……。
昨今の怪しいメールは、FacebookやInstagramの「友達申請」から始まる。
ライター稼業の私は“存在が知られてナンボ”だから、友達申請されたら、相手のプロフィールをそれなりに確認してから承認するかしないかを決めている。自分では用心していたつもりだったのに、今回は10日もの間、その気になっていたんだから笑っちゃうわよ。
事の発端は、私のFacebookの「知り合いかも」の表示に、パティシエの鎧塚俊彦さんの名前があったことなの。鎧塚さんとは面識がないけど、共通の友達なら何人かいる。それに彼はフォロワー数8000人超えの超有名人。彼のSNSの読者になるつもりで、気楽にこちらから友達申請をしたんだわ。
そうしたら数日して、〈こんにちは。友達リクエストを送ってくれてありがとう〉と返事が来た。へぇ、有名人なのに?と思って、すかさず〈こちらこそよろしくお願いします〉と返したら、翌日すぐに〈広子さん、こんばんは。広子さんは優れたライティングの達人ですね〉と来た。
〈高名なパティシエにそんなことをおっしゃっていただき、今夜は眠れません〉
〈広子さん、お早うございます。私も普通の人間ですし、人と人との交流は平等であるべきだと思います〉
〈まだその機会に恵まれませんがぜひ、鎧塚さんの作るケーキを食べてみたいと思います〉
〈私のケーキに興味を持ってくれて、非常に光栄です! あなたの計画を見てとても嬉しく思いますが、自分をあまり緊張させないように気をつけてくださいね! 私の作品は時々、小さな隅に隠れていて、発見されるのを静かに待っています。あなたが気に入る作品を見つけられるといいですね〉
んっ──パティシエが自ら作り出したスイーツを「小さな隅に隠れていて」なんて思うか? ……だけど、そのときはちょっと首をかしげておしまい。
そうしたらよ。