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【没後35年】松田優作のキープボトルが今も残る下北沢の老舗ジャズバー『LADY JANE』店主が明かす素顔「世間話から国際情勢、“気になる若手俳優、誰かいる?”なんて話もした」

『LADY JANE』のオーナー・大木雄高氏(撮影/田中智久)

『LADY JANE』のオーナー・大木雄高氏が松田優作さんとの思い出を振り返る(撮影/田中智久)

 没後35年。松田優作はドラマ『太陽にほえろ!』(1973年)のジーパン刑事で鮮烈にデビュー。村川透監督の『遊戯』シリーズや『蘇える金狼』(1979年)でアクションスターの地位を確立した。

 その一方で松田は、アクションだけではいずれ限界がくると考えた。ドラマ『探偵物語』(1979~1980年)ではハードアクションの要請を断わりコミカルな演技も披露。ピストルを捨て、演技派への脱却を図った。

 芝居を支える役作りにも心血を注いだ。狂気を秘めた難役で評価を得た『野獣死すべし』(1980年)では奥歯を4本抜き10kgの減量。足を5cm切断して肉体改造することも考えたと明かした。芝居への情熱と俳優としての燃えたぎる狂気が、没後35年の今も松田の輝きを保ち続ける。

今も残る松田優作のキープボトル「アーリータイムズ」(撮影/田中智久)

今も残る松田優作さんのキープボトル「アーリータイムズ」(撮影/田中智久)

伝説のジャズバーで“親友”と語った映画論

 東京・下北沢の老舗ジャズバー『LADY JANE』には松田優作のボトルが残る。松田は1978年に訪れて以降、常連として足繁く通った。

「優作は自分のボトルを仲間と空けて相手に払わせなかった。ひとりだとカクテルを始め、様々な酒を愉しんでいました」

 そう語るオーナーの大木雄高氏と松田はある晩に映画論を深く語り合って意気投合し、心の内を曝けだす仲になった。

「人間としてどうあるべきかを自問して、俳優・松田優作に投影する。その照らし返しを常にしていました。優作とは世間話から国際情勢、“気になる若手俳優、誰かいる?”なんて話もした」

 松田は大木氏の自宅を度々訪れるほど慕い、病を押して臨んだ『ブラック・レイン』のロケにも招いた。

「ハリウッドの現場では周囲のスタッフにすごくフレンドリーで、チャーリー役のアンディ・ガルシアとは互いのルーツを打ち明け、親友のような間柄になっていました」

 亡くなる1か月半ほど前にはふたりで旅をした。大木氏が試写で観た『ブラック・レイン』を絶賛すると、松田は“あれはまだ序の口”と軽やかに語ったという。松田優作は命を燃やしながら、未来を信じ続けていた。

取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2024年10月18・25日号

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