銀幕の大スター・阪東妻三郎さん(享年51)を父にもち、高廣さん(享年77)、正和さん(享年77)を兄にもつ俳優・田村亮さん(78)。望まずして俳優の道へと進んだが、デビュー60年が間近に迫る今も現役を続けている。初出演作や代表作、そして俳優という仕事について、振り返って思うところを聞いた。【全3回の第3回。第1回から読む】
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僕はもともと商社マンになりたくて成城大学経済学部に進んだぐらいで、俳優になる気はなかったんです。まだ、高校時代だったかなぁ。阪妻13回忌企画ドラマ『破れ太鼓』をNHKさんが制作するというので、「4兄弟が出てくれたら話題になるから」と言われ、すでに俳優をやっていた兄貴2人に迷惑をかけられないと思って出演したんです。
当時は素人だから、わけもわからないまま、ただ居ただけ。本読みのとき、立派な俳優さんやディレクターがコの字になって座るでしょ。木暮実千代さん、十朱幸代さん……「キレイだなあ」って、女優さんの顔ばかりボーッと見惚れていました(笑)。で、僕の番が来たら、ただ読むだけでした。高廣兄貴や正和兄貴のすごさもわからないし、兄貴たちも兄貴たちで僕に「ああしろ」「もっとこうしろ」とは言いませんでした。言われても、何もできませんしね。
大学に進むと、稲垣浩監督というオヤジととても懇意にしていた方から声をかけられ断れず、『暴れ豪右衛門』で映画デビューしました。その後、悩みましたが、結局、俳優の道へ。そして、俳優をやるならちゃんと基礎を学ばなければいけないと思い、大学卒業後、演出家の早野寿郎さんが所長を務めていた劇団「俳優小劇場」付属の養成所に入り、発声から学んだんです。