入所するための条件は緩く、人手不足の現場はいつも手一杯だった

入所するための条件は緩く、人手不足の現場はいつも手一杯だった

低価格の“カラクリ”「たくさん入居させて、介護報酬で稼ぐ」

「都内でも居室数が多いほうなので、安い費用で多くの利用者を入れて“介護報酬”で稼ぐつもりだったのではないでしょうか。訪問介護のサービスを行うと、利用料とは別に国から報酬がもらえるんですよ。

 なので経営側はどんな方でもなるべく多く入所させようという意向だった。安価であり、かつ入所条件も緩いため生活保護の方も多く、ある種受け皿のようにもなっていて、なかには透析が必要な方など、『うちではなく病院に行くべき』と現場が思うような医療依存度が高い方もいました。上が勝手に判断して入れるので、私たちにはどうしようもありませんでしたが……。

 訪問介護となると、通常業務とは別に、何時にどの利用者に訪問介護をするかライン(計画)を立てないといけないのですが、入浴やオムツ交換だけでも手一杯なので、現場としてはそんな余裕はありません」

 低価格のまま利用者を増やせるよう、運営側もある“工夫”をしていたと語るAさん。さらにこう続けた。

「人手が足りないので荒れている居室も多かったんですが、見学用のモデルルームだけはいつも綺麗にしていたんですよ。利用者のリネン(シーツ)交換すらままならない時もあったのに、その部屋はいつも整っていた。だから一見、安くて綺麗な施設だと安心して利用者さんを預けたご家族も多かったのかもしれません。

 また、これも料金が安いことに関係あると思うのですが、私が1月に入った時は利用者の朝食がありませんでした。高齢の方とはいえ、提供される食事だけでは足りないという方も多く、カップラーメンの自販機がよく長蛇の列になっていましたね。

 毎週日曜日に業者さんが補充に来るのですが、水曜日には在庫がカツカツなんてこともありました。さすがに可哀想だということになり、今はパンやヨーグルトをサービス朝食として出すようになったみたいです」

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