またひとり日本を代表する名優が旅立った──これまで多くの映画やドラマで活躍した西田敏行さん(享年76)が亡くなっていたことがわかった。西田さんの秘話について、放送作家でコラムニストの山田美保子さんが綴る。
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12月6日に公開される『劇場版ドクターX FINAL』のキャストのトメに名を連ね、10月8日、都内で行われた同作の完成報告会見にも登壇していらした西田敏行さんが、17日、東京・世田谷区の御自宅で倒れているのが見つかり、その場で死亡が確認されたということです。
この何年か、足が不自由になられたご様子は画面からも伝わってきました。今年1月期の日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS系)に出演されていたときは、終始、椅子に座っていらしたと記憶しています。
実はこの半年ほど、坐骨神経痛が全く直らず杖生活をしている私が愛用する『norico』というステッキ専門店の杖は、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)で西田さんが使っていらしたモノなのです。
杖生活は気分的には決して明るいものではありませんが、「西田敏行さんが撮影で使っていらした」というエピソードは、私を少しだけ明るい気持ちにさせてくれました。
「明るい気持ち」と言えば、私の高校時代、TBSで『ハッスル銀座』という公開番組があり、毎週テレビでも拝見していましたし、1度だけスタジオ見学に行ったことがありました。
松崎しげると組んで“即興メロディー”を披露
出演者は、西田さんと松崎しげるさんとTBSの林美雄アナウンサー。西田さんと松崎さんは互いに「松ちゃん」「西やん」と呼び合い、エンディング、観客の女性が一人選ばれて、3人の内の誰かを指名して、チークダンスを踊る……という、土曜の昼間なのに、なんだか飲み屋のような雰囲気の番組でした。
というのも、西田さんと松崎さんは、お互いが売れ始める前の西田さん26歳、松崎さん24歳のときからの飲み友達だったそうで、毎日飲み歩くなか、知り合いや先輩が経営する飲食店に顔を出しては、リクエストに応えて歌い、飲み代をタダにしてもらっていたそうです。
西田さんは『もしもピアノが弾けたなら』という大ヒット曲をお持ちで、作詞は阿久悠さん、作曲は坂田晃一さんですが、西田さん自身も即興でメロディーを紡ぐ天才で、それがまた夜の飲み屋で披露すると最高にウケたのだとか。
そして、その西田さんの傍らで『愛のメモリー』などの大ヒット曲を歌う前の松崎さんが合わせて即興で歌っていらしたのだそうです。それを目にしたTBSの局員が『ハッスル銀座』にキャスティングしたのだと後から聞きました。
私は新卒で就いていた仕事がTBSラジオで、まだ社屋も狭く、テレビ局舎とも自由に行き来できたため、当時のTBSのディレクターさんやプロデューサーさんのノリの良さを知っていました。
いや、TBSだけではありませんよね。いまの何十倍も元気が良かったテレビ局では、こうしてスタッフ自らが街に繰り出し、面白い人を見つけては翌週からテレビやラジオに出してしまうような傾向が各局にあったものです。本当にいい時代でした。