毎年、12月に利用が集中する「ふるさと納税」は、高級和牛やフルーツなどが人気を集めているが、近年はその地域ならではのユニークな体験が出来るものへの注目が高まっている。ライターの小川裕夫氏が、東京23区で次々と実現しているJR東日本とコラボした「ふるさと納税」についてレポートする。
* * *
2008年から始まったふるさと納税は、年を経るごとに納税額(寄付額)が右肩上がりで上昇。特に税収が乏しい地方都市は高級和牛やフルーツ、海産物など豪華な返礼品を用意して寄付を集めてきた。
ふるさと納税の返礼品合戦はどんどん過熱していき、さすがに総務省の指導が入るようになったが、その後も各自治体は知恵を絞って注目されるような返礼品を考案してきた。
東京都は地方税の原則を歪めるものとして、ふるさと納税には一定の距離を置き、都内の地区町村も当初は静観の構えを崩していなかった。しかし、ふるさと納税の総額が増えていくにつれて多額の税収が流出することになり、それらを防ぐ意図から23区でも各区が独創的な返礼品を用意する動きが活発化した。
東京23区は全国から注目されるような名産品がない。そうした背景から、23区では体験型の返礼品を用意する自治体が目立つ。
一日駅長、ディーゼル機関車で探検、シミュレーター体験
2023年10月、新宿区はふるさと納税による2022年度の流出額が約34億円と試算。ふるさと納税制度が廃止されない限り、毎年のように30億円以上の税収を失うことになる。そこで新宿区は、一日区長や新宿駅の駅長といった体験型の返礼品を用意した。新宿区は寄付額200万円で新宿区長の一日体験できるメニューのほか、JR東日本からの協力を取り付けて100万円でJR新宿駅の一日駅長体験も返礼品のメニューに加えた。新宿駅長体験は1日1名限定で2日間分が用意されたが、すぐに”完売”した。
ほかにも新宿区は30万円で終電後の新宿駅で駅員の仕事体験や車両見学ができるバックヤード体験、6万円でみどりの窓口やシミュレーターでの仕事体験プランも用意したが、こちらもすぐに”完売”している。