ネットスラングで「●●ガチャ」とは、自分では選べないが重大な結果をもたらすものを呼び、2021年の新語・流行語大賞トップ10に選ばれた「親ガチャ」によって広く知られ、応用されるようになった。そのひとつに転居先、新居の隣人からの過度なクレームや迷惑行為に悩まされるなどしてトラブルになる「隣人ガチャ」がある。ライターの宮添優氏が、ある日突然、隣人ガチャが外れた普通の人たちの悩ましい日々についてレポートする。
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ターミナル駅から近い、東京・豊島区内の瀟洒なタワーマンション。かつて、ここの上層階の住人だったという会社経営者の男性(50代)が、タワマンを見上げながらつぶやく。
「場所も気に入っていたし、永住も考えていたほどです。”隣人ガチャ”で外れを引かなければね」
男性がそのタワマンを購入したのは6年ほど前。購入者のほとんどが自宅として住んでいたが、その後、不動産価格高騰などにより資産価値が上がりはじめると、高値で売り抜き退去する住人もいた。男性の隣の部屋も同様で、間もなくやってきた新しい住人は、ほとんど日本語を話せない中国人6人の一家だったという。
「生活とか考え方の違い…と言われればそれまでかもしれませんが、マンションの内廊下、共用部分で子どもを大騒ぎで遊ばせたりゴミを置きっ放しにしたりなど、あり得ないことばかり。そもそも、わりとハイグレードなマンションなので、裕福な住民が多い。あの中国人一家も裕福そうで、頭も良さそう。話せばわかってもらえる、なんて思っていたんですよね」(男性)
管理人を通じて、中国語の注意文を手渡すと、中国人一家も「スミマセン」と謝罪。それから数日間は静かだったものの、その後状態は悪化した。間もなくして、親族らしき中国人がさらに数人やってきて、同居を始めたのだ。部屋はおそらく3LDKの一般的な間取りで、広くとも90平米ほどのはずだが、そこに10数名が暮らしていることになる。朝晩はそれまで以上に騒がしくなり、夜にはカラオケの音が建物中に響き渡り始めると、別フロアの住人や組合でも問題になった。だが当の家族からは「賃貸ではなく、自分で買った家に住んでいるのだから文句を言われる筋合いはない」と無視を決め込まれた。
「隣人ガチャに外れたら、外れた人間が引っ越すしかないでしょう。マンションはすでに賃貸にまわし、別に戸建てを購入しました。買う前に入念に調査しても、後からやってきたのがハズレの隣人ということもある。難しいですね」(男性)