全ターゲットのテレ朝に近い戦略
では、現在放送されているどんな番組に近いのか。
最も近いニュアンスがあるのは、長嶋一茂さん(58歳)、石原良純さん(62歳)、高嶋ちさ子さん(56歳)がメインを務める『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日系)と、長嶋一茂さん(58歳)、出川哲朗さん(60歳)、ホラン千秋さん(36歳)がメインを務める『出川一茂ホラン☆フシギの会』(テレビ朝日系)の2つ。
両番組はホランさんを除いてメインをベテランで固め、さまざまな話題でフリートークするほか、ガチンコのクイズコーナーなども行っています。本音トークやリアクションの良さが人気の理由となっていますが、『THE MC3』も特番では3人が「こんなの全然面白くねえよ」「嫌だった」「次、呼ばなくていい」などの自由なトークを炸裂させていました。
「『THE MC3』が『ザワつく』『フシギの会』に近い」ということは、「テレビ朝日系に近い戦略」と言っていいのではないでしょうか。同局は中高年層もターゲットに含めて全体の個人視聴率を得ていくという手堅い戦略を続けていますが、TBSとしては「その上で若年層をどれだけ引きつけられるか」の試行錯誤をしていくのでしょう。
そもそもテレビ朝日は民放主要4局で唯一、全年代に向けたオールターゲット戦略を進めていました。ただ、10~40代の個人視聴率で勝る他局がスポンサー収入では優位だっただけに、ここに来てテレビ朝日寄りの戦略変更はテレビ業界の苦境を物語っています。
しかし、TBSに限らず「ベテラン起用」「ターゲット層の上限を拡大」という流れは、必ずしもネガティブなものとは限りません。日本の人口分布や行動傾向が変わったことへの対応であり、スポンサーとしても中高年層にも物を売らなければ苦しい時代だけに、当然の流れにも見えます。
さらに、この「ベテラン起用」「ターゲット層の上限を拡大」はテレビ業界に限らず、エンタメ業界全体の傾向になっていくでしょう。現在、『踊る大捜査線』シリーズの新作映画が公開されているように、エンタメビジネスでは「いかに中高年層を動かしていくか」の重要性が増しているのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。