国内
石破茂首相は保守か、エセか

橋爪大三郎氏が分析 石破首相はまともな保守のいなかった日本政界で「岩盤保守」に対抗する「柔軟保守」になれるか

社会学者の橋爪大三郎氏

社会学者の橋爪大三郎氏

 来る総選挙は、自民党総裁の石破茂首相と野党第一党・立憲民主党の野田佳彦代表がともに「保守」を自任する政治家としてぶつかり合う。だがこの2人、果たして“本物の保守”なのか。社会学者の橋爪大三郎氏が分析する。

 * * *
 そもそも戦後の日本にまともな保守は存在してこなかった。

 戦後日本の改革、GHQ主導の財閥解体や農地解放などは、アメリカのニューディーラーと呼ばれる進歩派が、占領下の日本で理想の社会改造を進めるためにやったこと。理性主義である。

 ところが、彼らが壊そうとした戦前の日本も、軍国主義によって大東亜共栄圏という自分たちの思い通りの世界秩序をつくろうと考えていて、こちらのエリートたちも理性主義、進歩派の思想なのだ。

 戦後の出発点において、保守はいなかった。

 その後、戦後改革は生ぬるいから社会主義、共産主義の革命が必要だという勢力が出てくると、それに対抗して、「せっかく自由主義、民主主義、資本主義の国になったのに、共産主義になったら元も子もない」と考えた勢力が保守合同で自民党をつくった。アメリカの進歩派が日本にもたらした資本主義経済を守りましょう、という立場だ。

 そしてさらに年月が経つと、戦前の帝国憲法下の秩序が古き良き日本のように見えてきて、そこに復古しようという岩盤保守層の考え方が出来上がってきた。

 この岩盤保守層は安倍氏を支持していたわけだが、安倍氏は選挙に強いから自民党のリーダーとして選ばれた人。保守だから選ばれたわけではない。選挙の強さを追求した末に、安倍一強支配の自民党長期政権が出来上がったというグロテスクな構造があるのだ。

 さらに岩盤保守層は、夫婦別姓問題のように日本の伝統習俗に反するから認めるべきではないと固執するテーマが多い。

関連キーワード

関連記事

トピックス

急逝した俳優の西田敏行さん
晩年は病魔と闘う日々だった西田敏行さん「どう命をたたむか毎日考えている」「死を考えることが幸せ」東日本大震災で紡ぎ出された独特の死生観 
女性セブン
近藤真彦×三原じゅん子 還暦を迎えた2人のスペシャル対談!
【対談・近藤真彦×三原じゅん子】“金八”時代を振り返る「生徒役の中でもずば抜けて美人で“あのにおい”にやられてしまった」
女性セブン
シャンパンファイトでクレイトン・カーショー投手と肩を組んで満面の笑みの大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、初のポストシーズンで“感情爆発”シーン カーショーと肩を組み満面の笑み、カメラに向かって大口を開けてニコニコ顔も 
女性セブン
経営者の”ズンちゃん”ことズオン・ティ・ミン・ホン容疑者(28)。20代にしてやり手の女社長だ
《ベトナムガールズバー摘発》28歳美人社長”ズンちゃん”はクルーズ楽しむほどの羽振り アオザイ着たキャストの“おねだり営業”で4億円以上売り上げ
NEWSポストセブン
どんな内容なのか?(元テレ東・池谷実悠アナのファンクラブサイトより)
元テレ東・池谷実悠アナ、月額2.7万円「超高額ファンクラブ」のスゴい特典内容 会員の名前を呼ぶ「メッセージ動画」も
週刊ポスト
旧5人のメンバー。左から石崎琴美、吉田知那美、吉田夕梨花、鈴木夕湖、藤沢五月(時事通信フォト、Loco Solare)
《消えたロコ・ソラーレ功労者の現在》“切実な事情”でチームを去ったメンバーがカーリング離れて「病院勤務の専属職員」に転身
NEWSポストセブン
新築で購入時は何の問題もなかった(イメージ)
「隣人ガチャ」にハズレたタワマン住人の嘆き 「中国人が10数人で暮らし始め…夜は大きなカラオケ音が…」転居を決めるまでの顛末
NEWSポストセブン
10月17日、東京・世田谷区の自宅で亡くなった西田敏行さん
誰からも愛された西田敏行さん 大御所然としたところはなく誰に対しても物腰柔らか「ご近所さんから講演を頼まれてもふたつ返事でOK」 
女性セブン
失踪報道が出たピーコ
《おすぎとピーコの老老介護その後》荒んでいった生活…ピーコさん「おすぎとは違う施設に」と望んだ理由
NEWSポストセブン
自分の代わりに市川團子(左)をテレビに出したい思いも強いという
テレビから消えた香川照之が注力する息子・市川團子の“マネジメント” 「テレビに出したい」父と「歌舞伎と学業に専念したい」息子のすれ違い
週刊ポスト
息子を遠くで見守った
「とんでもない運動神経」慶大野球部・清原正吾秘話 父・清原和博氏の逮捕、断絶を乗り越えた先に…入部挨拶を父は遠くで見守った
週刊ポスト
急逝した俳優の西田敏行さん
西田敏行さん急逝 外出中に一報を聞いた妻は「自宅にいれば…」と憔悴 来年1月期にはドラマ出演も決まっていた 
女性セブン