「孫が中学3年の時に、2人で会津に一週間旅行に行ったんですよ。温泉巡りに付き合ってくれてね……それが最初で最後の二人きりの旅でした。自分で言うのも恥ずかしいですが、おじいちゃん子でしたよ」──そう語るのは、首都圏で相次いで発生している強盗事件に関連して逮捕された宝田真月容疑者(22)の祖父だ。目先のカネ目的で、殺人を犯したり、被害者を連れ去り監禁しているのは、安易な気持ちで「闇バイト」に応募した若者たち。黒幕は、若者に個人情報を送らせて逃げられないように脅しながら、凶悪犯罪に手を染めることを強いている。
一連の事件の背景にある「匿名・流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)」の実態把握を目指し、各警察本部は本腰を入れて捜査を進めている。10月21日現在、警察は各事件に関与した実行犯ら35人以上を逮捕しているが、まだ指示役にはたどりついていない。
相次ぎ自宅を狙った強盗事件が発生する中、10月15日には死者が出てしまった。横浜市の一軒家で、この家に住む後藤寛治さん(75)が、手足を縛られ、粘着テープで口を覆われた状態で死亡しているのが見つかったのだ。後藤さんは上半身を中心に拳や鈍器のようなもので殴られたとみられ、複数箇所を骨折していた。死因は全身の暴行による失血死。室内は荒らされ現金約20万円などが奪われていた。
この事件に関与したとして、10月19日に逮捕されたのが冒頭で触れた宝田容疑者だ。宝田容疑者の千葉県内の自宅を訪れると、憔悴しきった祖父母が取材に応じた。
「とにかく信じられないということだけです……。本当にうちの孫がやったんですかね……。優しい孫でしたよ。個人事業主として塗装業の下請けをしていてね、毎朝、早朝の電車に乗って仕事行くのですが、必ず『おはよう』と挨拶してくれます。私は『行ってらっしゃい』と言って送り出していました。5時台の電車に乗って、午後6時に帰ってくる。そんな毎日です。事件の前後2日は帰宅しなかったが、特に異変は感じなかった」(容疑者の祖父)