この重層的な仕掛けは、フェイクドキュメンタリーという手法を、テレビというフォーマットで取り上げることによって実現した、唯一無二の“発明”となった。
こうして「どこからが嘘なのか」「どこまで嘘が本当に見えるか」「どれくらい嘘の世界に没頭できるか」を楽しむ「嘘が混じっていることが自明」のコンテンツとしてフェイクドキュメンタリーは花開いた。『タイムスクープハンター』(2009~2015年、NHK)や『山田孝之の東京都北区赤羽』(2015年、テレビ東京系)といった、かつて「川口浩探検隊」が持っていたデタラメな悪戯心を継承しつつも、緻密な作り込みで精緻な世界観を構築した作品が生み出されていった。
テレビ番組のみならずイベントでも異物感丸出しの不気味な作品を生み続けているテレビ東京・プロデューサーの大森時生は自らの作品について次のように語っている。
「僕が作ろうとしている映像や違和感は、テレビの中ですごく異物になりやすい。ちょっと余白をあけて、視聴者に補完してもらうというか、自分で考えてもらう。そういう余白があるから、SNS上で感想をつぶやいたり、周りの人に『見てよ』って勧めていただいたりして、ありがたいことに話題にしていただいている」
SNS上で何かを言いたくなるというのが、重要なポイントだろう。昨今のいわゆる考察ブームと相まって、その「余白」をひとりで、ではなく、みんなで埋めていく。だから話題はより広まっていく。その主体性が幸福な“共犯関係”を生んでいくのだ。