時代とマッチングした?
これまで様々なゲームバラエティ、ゲーム企画が生まれてきたが、「音」に特化するようになったのは、コロナ禍とは無関係ではないだろう。未曽有のパンデミックによって人と人が接することが禁じられ、声を出すことがはばかられた。
『音が出たら負け』の採用に関して、企画・プロデュースした日テレ アックスオンの野中翔太氏は、8月に行われた「若手クリエイターズフォーラム」で次のように述べている。
「『音が出たら負け』は、コロナ禍じゃなかったら通ってないって言われました。1人で静かにやってるんで、飛沫しないというのが通った理由の一つだった」
しかも「局内とかで“番組ではなく、コーナー企画だ”と言われたんですけど、時代とマッチングしたというのがありました」とも述べている。
音や声があることが当たり前だったテレビの中で、静寂であろうとした企画は、ある意味時代に即したものだったのだ。もちろんそれ以前にも、人々の「音」への配慮は、より過敏になっていた。公園で遊ぶ子どもたちの嬌声が近隣住民から「騒音」と言われたり、特に外国人が、我々の蕎麦やラーメンなど麺をすする音を不快に感じるなど、それまで気にもとめていなかった音や声に対する“他者の視線”を日本人が感じ始めたのも、「音を立てない」企画が共感を得ている潜在的なトリガーになっているかもしれない。
音が出て、しかも映像が見えるのがテレビ本来の魅力なのだが、そうした背景によって、新しいゲームが生まれ、その可能性を広げてくれているとしたら、皮肉ではあるが面白い。(芸能ライター・玉置天津)