そうした指摘が出た背景には、今回の衆院選で東京の小選挙区が5増となることが背景にある。政権交代を目指す立憲民主党にとって、きたる衆院選に一人でも多く勝てる候補を擁立したいと考えていたはずで、参議院の東京選挙区で4選を果たしている蓮舫氏はそれに適っていた。
そうした経緯もあって、「都知事選に落選しても、きたる衆院選に出馬するための準備」と見る向きも強かった。
しかし、蓮舫氏は衆院選には出馬せず、最終的に一都民として衆院選を迎えた。一都民という立場ながらも、立憲民主党の候補者を応援するために都内の街頭に立ち、マイクを握って支持を呼びかけている。
筆者は15年以上にわたり蓮舫氏を取材してきた。先の都知事選では10回以上も蓮舫候補の街頭演説に足を運んでいる。蓮舫氏の演説は大きな声で聴衆に呼びかけるスタイルで、それは都知事選でも変わらなかった。ところが、今回の応援演説は柔らかな語り口になっていた。
これまでも蓮舫氏は、選挙のたびに仲間の応援で各地を回って演説を重ねてきた。2022年の参議院選挙でも自身が出馬しながらも、応援演説で東京を留守にすることが多かった。
応援演説に引っ張りだこになるのは人気の証だが、その一方で相当な重圧を感じていたことは間違いない。
今回、蓮舫氏自身は立候補していない。あくまでも、一都民という立場で応援演説をしている。衆院選の応援演説に立つことに責任をまったく感じていないわけではないだろうが、一人でも多く当選させなければならないという執行部の重圧から解放されて、肩の力が抜けた演説になっていたことは間違いなかった。
都知事選からわずか3か月しか経過していないにも関わらず、3者の関係は大きく揺れ動いている。政治の世界は、一寸先は闇と言われる。今回の衆院選の結果を受けて、自公連立政権は少数与党となる。永田町は混迷を深めることになりそうだ。