上皇ご夫妻が暮らされる仙洞御所(時事通信フォト)

上皇ご夫妻が暮らされる仙洞御所(時事通信フォト)

リハビリを上皇さまが見守る

 現在、ご移動には車椅子を用いられている美智子さま。上皇さまとの日課のうち、音読はすでに再開されたが、散策は上皇さまがおひとりで行われている。美智子さまの当面の目標は、来年の「新年一般参賀」へのご出席だという。

「皇居・宮殿のベランダに両陛下や皇族方がずらりと並ばれるのは、お正月の風物詩。今年は能登半島地震の発生により中止となったので、美智子さまは来年にかけるお気持ちを強くお持ちです。車椅子姿ではなく、杖をついてでも自分の足で必ず立ち上がり、国民に元気なお姿を見せたいという思いのようです」(別の宮内庁関係者)

 そこまでの道筋には大きな苦難が待ち構えている。手術した脚に体重をかける訓練や立つ訓練、平行棒や歩行器を使った歩行訓練といったプロセスを、段階を踏みながら進められていく。並行して、骨折した骨に隣接する関節を動かす訓練や、筋力トレーニングも行われる。湘南鎌倉人工関節センターの副院長・三原政彦医師が解説する。

「特に、平行棒や歩行器での歩行訓練は苦痛を伴うため、ハードルが高いと思います。手術を受けられたことで、股関節周囲は可動時や荷重時にある程度の疼痛が出るのは避けられません。そうした状況で、腕で体を支えながら立った状態を維持し、さらに脚を前に出すという動作は、慣れるまではかなり大変です」

 現在、美智子さまは午前と午後の2回に分けて、毎日欠かさず、訓練に取り組まれている。

「日によって多少の違いはありますが、ご体調を見ながら、昼夜を合計して1時間ほどリハビリを行われています。上皇さまが立ち会い、励ましの言葉をかけられることもあるそうです」(前出・皇室記者)

 一般に大腿骨骨折の場合、手術をした急性期の病院から、リハビリ専門病院に転院するケースが多いという。一方、美智子さまが選択されたのは、「自宅リハビリ」。住み慣れた環境で過ごすことで精神的な安定を得られる半面、リハビリに使えるスペースや器具の問題がついてまわる。加えて、人員の問題もある。

「リハビリの際、美智子さまの元には、東大病院から理学療法士が派遣され、指導をしているそうです。ただ、昼夜のリハビリに常に療法士がいるわけではなく、立ち合うのはどちらか片方の時間帯だけ。もう片方は専門家の指導を仰ぐことなく、“セルフリハビリ”だといいます」(前出・別の宮内庁関係者)

 理学療法士は、「立ち上がり動作や歩行練習、段差昇降など基本的な動作能力の向上をはかる、リハビリを手助けする存在」(前出・三原氏)だ。リハビリ中の転倒などによるけがの“再発”も防がなければならない。

 もちろん、仙洞御所にはお付きの職員もいれば、かかりつけ医に当たる侍医もいる。とはいえ「リハビリの専門家」ではない。歩行訓練の補助はもちろん、転倒に備えて体を支えたりしないといけないため、療法士不在のリハビリには不安も囁かれる。それでも美智子さまがリハビリに励まれるのは、「必ずもう一度立ち上がる」という執念と、緻密な計画があるからだろう。

「美智子さまは、大腿骨の手術前から、医師にけがや手術の詳細、術後のリハビリなどについて細かく尋ね、情報収集されていました。効果的なリハビリについてご自身で相当に研究されているようです。けがの前には普通に行えていたことも、痛みを抱えながら繰り返すのには苦痛を伴い、ひとりで励むのには忍耐が必要です。美智子さまは、皇族としてのご覚悟と、上皇さまをお支えするお気持ちを持って、苛酷なリハビリに取り組まれ続けるのでしょう」(前出・別の宮内庁関係者)

 上皇ご夫妻は10月28日、「ご夫妻の卒寿を祝う会」に出席されるため、霞会館(東京・千代田区)に向かわれた。車椅子用の車両に乗られた美智子さまにとっては、手術以降初めての外出だった。美智子さまが、以前のように私たちの前に立たれる日が、必ずやってくる。

※女性セブン2024年11月14日号

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