あそこにいて更生するはずがない
刑務所の中で受刑者らがつく嘘は覚せい剤で逮捕された者なら「俺は覚せい剤を10kgパクった」「億単位のヤクを密輸した」というようなもので、泥棒なら「俺はきちんと住人がいる時に盗みに入った。人がいない時に侵入するなんて、そんな汚い真似はしない」「俺はトイレにまで入って、用を足してきた」という類のもので、「わけのわかんない自慢話でね。あの中は日々、そんな話ばかり聞く所だから更生するような所ではない。あそこにいて更生するはずがない」とまでいう。
裁判などの際に報道されるような犯人が事件を起こしたことを後悔し、反省している、罪を償い更生を誓う、というようなことは、彼らには当てはまらないと組長は説明する。「ヤツらは口では『反省してます』って言うけど、そんなヤツは1つも反省してないね。簡単に反省っていうけど、今度はパクられないようにしようと思っているだけ。ごめんなさいは誰でも言えるけど、二度と繰り返しませんと誓えるヤツはあそこにはいない」。
「反省できる人間は、社会にいてもどこにいてもちゃんとした人間だ。嘘を繰り返しているような人間に反省はない。ヤクザものは簡単に反省って口にするなだ」
反省しない彼らは刑務所の中で、日々何を考えているのか。組長は「先のことは考えない、考えても無駄なんで。無期懲役以外は出所する日が決まっている。出たら何をしようかなんて、間近になってから考えることだ。刑期が3年なら、入ってから折り返し地点までは、そこで楽に過ごすことしか考えない。折り返し地点になって初めて、出所した時のことを考える。出所するのが春だろうが、秋だろうが、カレンダーが新しくなって”おっ、今年は出れるな”というところから、先のことを考えるようになる」。
改めようと振り返って考えるのは、捕まらないための犯罪の手口であって、己の将来や生き方ではないようだ。