自分が満足できるものでしか、人はもてなせない
「私がお弟子さんによく話すのは、日頃から自分で点てたお茶を飲むことの大切さです。ふだんから自分のためにお茶を点てている人は、おいしい湯の沸き加減、お茶の量などがちゃんとわかっている。だからいつでも人にもおいしいお茶が点てられるのです。
反対に、稽古場でしか点てない人は、人に差しあげるばかりなので、自分の点てたお茶がおいしいのかどうかわからない。自らがおいしいと思えないお茶では、人をもてなすことはできないのです。この、おいしいお茶で人を喜ばすことは、作法を正確に覚えることよりもずっと大切なことなのです。
『わが身に置きかえる』とは、まず自らが楽しみ、自分本位の満足を得ること。他人本位であり、同時にまた自分本位である。
このふたつを表裏一体として、毎日の習慣とすれば、人間関係での迷いは少なくなり、悩みも改善されていくのではないでしょうか」(千氏)