国際情報

《米大統領選》トランプ氏が巧みに利用した、集団になれば過激な言動をしてしまう「集団極性化」

ドナルド・トランプの大統領選勝利を伝える速報と、それを見つめる支持者たち。フロリダ州ウエストパームビーチ(EPA=時事)

ドナルド・トランプの大統領選勝利を伝える速報と、それを見つめる支持者たち。フロリダ州ウエストパームビーチ(EPA=時事)

 期日前投票ですでに放火や暴力事件が複数発生するなど、2021年の議会襲撃事件が暗い影を落としている米大統領選挙。投票所を有刺鉄線や分厚い鉄柵で囲み、金属探知機を設置し武装した警備員を配置するなど厳戒態勢が続いており、何がきっかけで集団が暴徒化するが分からないと危惧されている。臨床心理士の岡村美奈さんが、大統領選に勝利したドナルド・トランプ前大統領と「集団極性化」について考察する。

 * * *
 ギリギリまで接戦といわれたアメリカ大統領選がついに決着。消去法でトランプに投票した人だけでなく、やはり隠れトランプもいたのだろう。もしトラが現実のものとなった。演説中に銃撃されて負傷し、奇跡の1枚と呼ばれる写真とともに生かされたと語ったトランプ氏が復活。だが返り咲きを狙ったトランプ氏が候補者になったことで、選挙戦はこれまでにないほど誹謗中傷が飛び交った。

 日本のメディアがそこを強調して報じたためもあるが、大統領選挙はますます泥試合と化し、政策論争よりも非難の応酬がメインになってしまった印象が強かった。どこまでが嘘かわからない中傷でも平気で口にするトランプ氏にとって、カマラ・ハリス副大統領はバイデン大統領よりも、相手としては面倒だが、攻撃しやすかったのではないだろうか。女性で自分よりも若く、移民二世、業績の少なさは「The Achievements of Kamala Harris(カマラ・ハリスの功績)」という本で目次以外は白紙と例えられた候補者だったからだ。

 ハリス氏も攻撃の手を緩めず、トランプ氏が大統領になれば米国が危ないと警告。トランプ氏を大統領にしないために投票するよう呼び掛けた。それに呼応するように、トランプ支持者たちは発言をエスカレートさせた。この大統領選で、メディアやネットを通して見えたのは、強く支配的なリーダーの元に集まった熱狂的な人々が作る集団のエネルギーの強さだ。その強さは前回の大統領選をしのぐ勢いだった気がする。支持者らにとっては、トランプ氏の返り咲きを4年間待っていたのだ。

 人は集団になるだけで意見や決定が変質するという「集団思考」の傾向があるといわれる。例えそれが不合理であっても、個人よりも集団のコンセンサスに合わせよう、合わせたいと強く思うようになり、集団の意見が優先されるようになる。そこに強烈な個性を持つリーダーがいて集団を先導すれば、人々は疑問を持つことなくそれに追従しようとする。外部の脅威は彼らにとって否定すべきストレスになり、排除しようと結束を固める。二つに分かれた支持者たちの間で、分断が深くなったのも無理はない。

関連記事

トピックス

ブラジルを公式訪問している佳子さま(写真/アフロ)
佳子さま、外交関係樹立130周年のブラジルを公式訪問 子供たちと笑顔でハイタッチ、花柄のドレス姿も 
女性セブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
家出した中学生を自宅に住まわせ売春させたとして逮捕された三ノ輪勝容疑者(左はInstagramより)
《顔面タトゥーの男が中学生売春》「地元の警察でも有名だと…」自称暴力団・三ノ輪勝容疑者(33)の“意外な素顔”と近隣住民が耳にしていた「若い女性の声」
NEWSポストセブン
山本賢太アナウンサーのプロフィール。「人生は超回復」がモットー(フジテレビ公式HPより)
《後悔と恥ずかしさ》フジ山本賢太アナが過去のオンラインカジノ利用で謝罪 「うちにも”オンカジ”が…」戦々恐々とする人たち
NEWSポストセブン
親日路線を貫いた尹政権を「日本に擦り寄る屈辱外交」と断じていた李在明氏(時事通信フォト)
韓国・李在明新大統領は親中派「習近平氏の接近は時間の問題」、高まる“日本有事”リスク 日米韓による中国包囲網から韓国が抜ける最悪のケースも
週刊ポスト
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 落合博満の巨人入団をめぐって議論白熱「どう転ぶかわからないけど、ボクは落合を獲るのがいいと判断した」
週刊ポスト
田中真一さんと真美子さん(左/リコーブラックラムズ東京の公式サイトより、右/レッドウェーブ公式サイトより)
《真美子さんとの約束》大谷翔平の義兄がラグビーチームを退団していた! 過去に大怪我も現役続行にこだわる「妹との共通点」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《「来来亭」の“ウジムシ混入ラーメン”動画が物議》本部が「他の客のラーメンへの混入」に公式回答「(動画の)お客様以外からのお問い合わせはございません」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン