地域に愛される店舗に
かつて、佐藤さんは『丼太郎』のチェーン展開も考えたが、現在目指しているのは“地域に愛される店舗”だ。毎日のように顔を見せる常連客が店を支えているという。
「昔ながらの内装だからか、ドラマなどのロケ撮影の依頼もあります。常連さんから『見たよ』って喜んでもらえるので依頼を受けることもありますが、ロケで店を長時間閉めなければいけないものはお断りしています。常連さんが来てくださった時に食べてもらえないのは、本末転倒ですから」
また、佐藤さんは「ウーバーイーツ」などのデリバリーサービスの導入も見送っているという。
「ウーバーの方が『一度どうですか?』って来たこともありました。でも、牛丼一杯じゃ割に合わないので、700円や800円のセットにする提案をされたんです。でも、それはうちの目指す方向性とは違うんです」
体が動かなくなるまでやる
現在の従業員は、全員がベテラン揃い。店を続けていく意思があるか尋ねると、佐藤さんは「体が動かなくなるまでやりますよ」と即答する。
「4人で相談して、最後までやろうって決めました。もともと、僕たちには牛丼しかないんです。“牛丼バカ”4人が集まって、趣味でやってるようなもんなんですよ」
この記事の場を借りて“後継者を探しましょうか”と尋ねたが、キッパリと断られてしまった。過去には“店を継ぎたい”と、志望者が来たこともあるが、長くは続かなかったそうだ。ビジネスモデル的に儲かる商売ではないから“牛丼バカ”にしか務まらないということか。
情熱が詰まった一杯は、ここで静かに守られている。
(了。前編を読む)