調理や提供工程のロボット化、フードデリバリーサービスの台頭など、ここ数年で外食産業を取り巻く環境は目まぐるしく変化している。
しかし、そんな流れに逆らうように、職人の手でつくる温かい味と、地域密着にこだわる牛丼店がある。文京区茗荷谷にある『丼太郎』では、従業員4人で店を切り盛りし、牛丼並盛を破格の390円(税込)で提供。昨今、『吉野家』『松屋』『すき家』の大手チェーンの牛丼並盛の価格が400円台となり500円を突破しようとしているなかで、破格の低価格だ。
その秘密はベテラン従業員4人での徹底的に切り詰めた経営スタイルにあった。思いを取材した。【前後編の後編。前編から読む】
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店に入って購入した食券をカウンターに置くと、冷蔵庫から冷えた薄味の麦茶がすぐに出てくる。その麦茶をひと口、ふた口飲む間に、カウンターの向こうで手際よくご飯をよそい、熱々に煮込まれた牛肉をのせた牛丼ができ上がる。
「牛丼並盛りです」──店内が混雑していても、驚くほどスピーディーに提供される。客の食事中には適宜、卓上の紅生姜を補充するなど、隙のない動きを見せるのが社長の佐藤慶一さん(59)だ。
「牛丼一筋40年。でも実は、4人いる従業員の中で僕が一番手際が悪いんですよ。他のスタッフはもっとスゴい。2人で店に立っていても阿吽の呼吸なので、どんなに混んでいても絶対にぶつかりません」
こう話す佐藤さんにとって、《この従業員こそ会社のいちばんの資産》と語る。牛丼作りのプロたちとともに働くなかで、従業員らに十分な生活をしてほしいとの思いから、自身の給料は一番低く設定しているのだとか。