ワールドシリーズを制覇したロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平(30)は、二刀流をはじめとする野球界で前例のない活躍で「漫画のような男」と言われてきた。そんな大谷が愛読した漫画として取り上げられるのが、週刊少年サンデーの人気野球漫画『MAJOR』だ。作者の満田拓也氏(59)が本誌・週刊ポストのインタビューで、悲願の世界一を達成した大谷への祝福メッセージを寄せた。
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大谷選手が革命的なのは、野球で見たことのないシーンを見せてくれることですよね。日本ハムファイターズで二刀流に挑戦した頃から、「やることが漫画みたい」ということはメディアで騒がれていて、『MAJOR』の愛読者という情報も言われていたのですが、僕ははっきりしたソースが分からない(笑)。少しでも読んでもらっていたら嬉しいですね。
僕は昔から、素朴な疑問として「高校野球ではエースで4番がいるのに、なぜプロにはいないのか」と思っていて、『MAJOR』の主人公・茂野吾郎にも「オレが理想とする究極のプレーヤーは… 打って走って守れ── そして三振もとれるプロ野球選手さ!!」と言わせました。大谷選手も、野球のすべてを楽しみたい人だと思うんです。だから「漫画みたいな人」と言われてきたし、今年は投球も守備もできない代わりに「打つだけじゃなく、走ろう」と考えたんじゃないか。ピッチクロックとか、ルールの違いもあるので一概に比較はできませんが、盗塁でもイチロー選手のシーズン記録を抜きましたからね。
ワールドシリーズでもヤンキースにプレッシャーを与え、成績以上の存在感を放ったのは間違いありません。とくに今回、大谷選手はジャッジ選手と一緒に「ワールドシリーズの顔」となっていた。プレッシャーや責任感を背負ったことで、チームに好影響を与えていたと思います。
例えば、ポストシーズンを通して言えることですが、相手ベンチが警戒して、大谷選手の打席で左ピッチャーに継投する場面が多かった。すると、1番・大谷選手、2番・ベッツ選手の打席で3番のフリーマン選手が球筋を見極めることができますよね。ワールドシリーズ初戦のフリーマン選手のサヨナラ満塁ホームランも、直前の大谷選手の打順で左ピッチャーに交代していました。だから、大谷選手がフリーマン選手のMVP獲得に貢献した面もあると思うんですよ。
来年はピッチャーもやると、1番を打つかも分からないし、ドジャースの起用法が楽しみですよね。また新しい大谷選手のスタイルが見られる。右肘の手術明けなので過度な期待はよくないかもしれないけど、二刀流でサイ・ヤング賞を期待してしまいます。
それに31歳になるシーズンなので、年齢とキャリアを重ねて二刀流とどう向き合っていくかも興味深いですね。『MAJOR』と関連付けて言うと、僕は吾郎に、MLBでクローザーをやらせているんですよ。その意味では、「クローザー・大谷」も見てみたい。もちろん先発ピッチャーがいちばんの花形ですが、8回までDHで打席に立って、9回からクローザーとしてマウンドに上がるとしたら、右肘への負担が減るかもしれない。その場合、どうやって準備するんだろう、と想像しますね。WBCのようにDHを解除して登板する姿を、シーズンでも見せてほしい。そんな野球選手、これまでに見たことないじゃないですか。
【プロフィール】
満田拓也(みつだ・たくや)/1965年生まれ、1982年漫画家デビュー。1994年に「週刊少年サンデー」で『MAJOR』の連載を開始し、現在は同誌で『MAJOR 2nd』を連載中。
※週刊ポスト2024年11月22日号