「オレオレ詐欺」は見て見ぬ振りも、「タタキ」は厳禁
暴力団社会では名実ともに認められた“名門組織”による、「闇バイト」への組織的関与が疑われている。11月12日、家宅捜索の一報が報じられるとSNSでも大きな話題を呼んだが、当の暴力団業界はどう捉えているのか。取材をすると、反応は薄かった。広域暴力団の二次団体幹部はこう口にする。
「今回逮捕された組員の容疑は“出し子”“受け子”の募集をしていたということから、おそらく『オレオレ詐欺』の類ではないか。あまり胸を張って言えることではないが、『オレオレ詐欺』による事務所の家宅捜索なんて珍しくもない。何で大騒ぎしてるんだとも思う。世間が“闇バイト”への怒りが高まっているタイミングだから、警察も大々的にパフォーマンスとしてやったんだろう」
報道を調べると、確かに「オレオレ詐欺」による事務所の家宅捜索は珍しくない。六代目山口組に至っては、山口組系組員らによる「オレオレ詐欺」の被害者3人が、「トップに責任がある」として司忍組長へ損害賠償を求める訴訟を起こしていた。一審で賠償命令が下り、司組長側は控訴していたものの、今年6月14日に司組長側が約3200万円の和解金を支払っている。別の在阪暴力団幹部もこう口にする。
「『オレオレ詐欺』をやっている組員なんて珍しくもない。もちろん組織としては“やってもいい”なんて堂々と言うことはないし、逮捕されれば処分はする。ただ、上納金のために見て見ぬフリをしているところがほとんどじゃないか。頭の働く一部の組員は投資などで儲けているが、少なくない組員がクスリの売買や『オレオレ詐欺』など違法なシノギで収入を得ているのが実情だ」
しかし、今回の道仁会への捜査の展開次第では「事態が大きく変わる」と、前出・広域暴力団二次団体幹部は指摘する。
「同じ『闇バイト』にまとめられるが、“タタキ”といわれる強盗、強盗致傷だけはどの組織も厳しく禁止しているはずだ。世間を騒がした“ルフィ”一味の際に、多くのヤクザ組織が警察からより厳しく見られるようになった。もし関与していたとなれば組織が取り潰しになってもおかしくないため、ルフィ騒動の後に多くの組織は“絶対にやるな”と厳命しているはずだ。もし捜査で道仁会が“タタキ”に組織的関与をしていたことがわかったら大変なことになる」
市民も暴力団も捜査の展開を注視しているのは間違いないようだ。