国際情報
なぜ日本人はトランプを見誤ってしまうのか

【トランプ氏勝利を東浩紀氏が分析】「なぜ民主党が嫌われたのか」“保守対リベラル”の図式に生じる地殻変動「大衆の怒りの受け皿になれないリベラルは総崩れする」

“トランプ氏圧勝”を見越していた批評家で作家の東浩紀氏

“トランプ氏圧勝”を見越していた批評家で作家の東浩紀氏

 何がトランプ圧勝をもたらしたのか──日本では、その政治力学が理解されていない。“大接戦”という誤報を流し続けた新聞・テレビの報道では、わからなくて当然だ。そのままでは、今後の日米関係や国際情勢は見通せない。“トランプ氏圧勝”を見越していた批評家で作家の東浩紀氏が、今起きていることの本質を読み解く。

 * * *
 トランプ氏の勝利は、アメリカの右傾化や排外主義の浸透などといった話ではなく、シンプルに大衆の間に満ちていた「格差への怒り」によって下された選択だ。その怒りを直視せず、高学歴都市住民のほうばかりを向いていたハリス氏と民主党は、国民からそっぽを向かれた。

 当たり前だが、多くのアメリカ国民はトランプ氏の言動に問題があると理解している。だが、それでもハリス氏を選べないほど民主党が敬遠されたのだ。アメリカ人が「民主主義を壊してしまった」「騙されている」といった考えでは、“なぜ民主党が嫌われたのか”という本来、向き合うべき問いが隠れてしまう。

 日本の左翼リベラルにも、同じ現象が起きている。今年7月の東京都知事選では、立憲民主党の参議院議員を辞め、共産党と共闘した蓮舫氏が3位に沈んだ。耳当たりのいいことばかりを言う左翼リベラルが、大衆の怒りの受け皿になれない構図は大統領選と似ている。

 この現象は世界各地で起きており、保守対リベラルという図式に地殻変動が生じているのだ。

 今後、20世紀の左翼運動を引きずったリベラルは急速に力を失い、総崩れを起こすだろう。そしてこれに代わって、新しい知識人層が一種の階級闘争のように立ち現われてくるのではないか。

 新しい対立軸はまだ見えないが、もしかするとトランプ氏を熱烈に支援したイーロン・マスク氏は新しい知識人の走りかもしれない。有権者登録をした者に現金を贈って物議を醸したが、億万長者の道楽とは片付けられない存在感を示した。社会から信頼を勝ち得たのは、テスラやスペースXの事業を通じて変革をもたらした実業家だったからだ。

 これまで知識人、とりわけ左翼は社会運動やNPOといった職業基盤を足場にしてきたが、そうした基盤が実業家を含む別の何かにシフトしているようにも見える。もはや戦略を大きく転換しなければ、リベラルは生き残ることすらできない。

関連記事

トピックス

指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《10年抗争がなぜ突然?》六代目山口組が神戸山口組との抗争終結を宣言 前兆として駆け巡った噂と直後に投稿された怪文書
NEWSポストセブン
川崎
“トリプルボギー不倫”川崎春花が復帰で「頑張れ!」と声援も そのウラで下部ツアー挑戦中の「妻」に異変
NEWSポストセブン
最後まで復活を信じていた
《海外メディアでも物議》八代亜紀さん“プライベート写真”付きCD発売がファンの多いブラジルで報道…レコード会社社長は「もう取材は受けられない」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《“ショーンK復活”が話題に》リニューアルされたHP上のコンサル実績が300社→720社に倍増…本人が答えた真相「色んなことをやってます」
NEWSポストセブン
依然として将来が不明瞭なままである愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
愛子さま、結婚に立ちはだかる「夫婦別姓反対」の壁 将来の夫が別姓を名乗れないなら結婚はままならない 世論から目を背けて答えを出さない政府への憂悶
女性セブン
28歳で夜の世界に飛び込んだ西山さん
【インタビュー】世界でバズった六本木のコール芸「西山ダディダディ」誕生秘話、“夢がない”脱サラ社員が「軽い気持ち」で始めたバーダンスが人生一変
NEWSポストセブン
通算勝利数の歴代トップ3(左から小山さん、金田さん、米田さん)
追悼・小山正明さん 金田正一さん、米田哲也さんとの「3人合わせて『1070勝』鼎談」で「投げて強い肩を作れ」と説き、「時代が変わっても野球は変わらない」と強調
NEWSポストセブン
行列に並ぶことを一時ストップさせた公式ショップ(読者提供)
《大阪・関西万博「開幕日」のトラブル》「ハイジはそんなこと望んでいない!」大人気「スイス館」の前で起きた“行列崩壊”の一部始終
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン