2024年米大統領選──“大接戦”という誤報を流し続けた新聞・テレビの報道では、トランプが圧勝した背景を正しく理解できない。“トランプ氏圧勝”見越していた作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏が、今後の日米関係や国際情勢を読み解く。
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意外に聞こえるかもしれないが、トランプ氏は大胆不敵に見えて宗教的な部分を大切にしている。
共和党の大統領候補の座を確実にした今年3月末、彼は『HOLY BIBLE:GOD BLESS THE USA』(『聖書:神がアメリカ合衆国を祝福する』)と題する本を販売した。旧約聖書や新約聖書に加え米国憲法、独立宣言などを収録した“トランプ版聖書”であり、自らの権力の源泉がキリスト教にあることをアメリカ国民にアピールしたものだ。
大統領選の流れを大きく変えた、7月にペンシルベニアで起きた銃撃事件の宗教的な影響も無視できない。
演説中に放たれた銃弾が右耳を掠めながらも一命を取り留めたトランプ氏は、「自分が死ななかったのは神からの使命があるからだ」と確信したはずだ。そして、アメリカと自分たちの将来に不安を抱く一般大衆は、流血しながらも拳を突き上げて叫ぶ彼の姿に“神に選ばれた男”を見た。この時点で大統領選の結果はほぼ決まっていた。
バイデン氏の撤退後、上流階級や官僚、セレブなどのエスタブリッシュメントがハリス氏を後押し、一時は“ハリス旋風”と持て囃された。しかし、彼女はもともと、「核のボタンを任せられない」と酷評されて大統領候補争いに参加できなかった政治家だ。“神に選ばれた男”には敵わない。ハリス旋風が“虚構”であることは、日本の内調や官邸幹部も見抜いていたことを付け加えておく。
キリスト教は今後の日米関係を占うキーワードでもある。
あまり前面に出さないが、石破茂氏はプロテスタントのキリスト教徒だ。版元からの直販のみの『石破茂語録 主よ、用いてください』(あだむ書房)を紐解くと、彼のバックグラウンドに強力なキリスト教信仰があることがわかる。このことが彼の政治姿勢にも影響を与えている。