友風と握手をする尾車親方。2018年の新十両昇進時(時事通信フォト)

友風と握手をする前・尾車親方。2018年の新十両昇進時(時事通信フォト)

 その余波も大きそうだ。現在の伊勢ヶ濱部屋には、今年3月場所をもって弟子の不祥事によって自身の部屋が閉鎖された元横綱・白鵬の宮城野親方がいるからだ。

「伊勢ヶ濱親方が65歳で退職するのに合わせて宮城野部屋を再興できる可能性があると見られていた。しかし、NHKの専属評論家を尾車さんに持っていかれたことにより、伊勢ヶ濱親方が退職して照ノ富士に部屋を譲るのか、新たに年寄株を入手して協会に残り、部屋の陰のオーナーとして目を光らせることになるのかが流動的になってきた。

 部屋の閉鎖から再興まで1年というのが短すぎるという声も協会内にあり、伊勢ヶ濱親方の退職という節目がないなら、速やかな再興は難しくなるのではないか。いずれにしても、照ノ富士が伊勢ヶ濱部屋の後継者となるのは既定路線。白鵬も同郷の後輩である照ノ富士の指示を受け、すべてにおいて許可をもらうことになる。白鵬がどこまで耐えられるのかも注目となる」(同前)

 前・尾車親方が角界にポジションを築くことで、宮城野親方の今後のキャリアにまで影響がありそうだと見られているわけだが、その先に何が待つのか。相撲ジャーナリストが言う。

「NHK大相撲中継のご意見番としての地位を築いた北の富士さんが弟子である八角理事長(元横綱・北勝海)を協会トップに押し上げたように、尾車さんも同じ二所ノ関一門の佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)を理事長にプッシュしようとしているとされる。しかも、二所ノ関一門には大の里と琴櫻という2人の日本出身横綱候補がいる。2人が綱取りを果たせば、まさに尾車さんの天下となるのではないか。

『尾車』の年寄株も将来的には琴櫻が襲名する予定で佐渡ヶ嶽部屋に返還したという。協会を退職してなお、今でも角界への影響力を持ち続けている。現在、尾車さんはスポーツ報知の専属評論家でもある。もともとは白鵬がメインでやっていたが、弟子の暴力事件で現在は休載中。今場所も初日前日のスポーツ報知には“白鵬の九州場所展望・評論・総括は休みます”と報じられた。そして、尾車さんの『元大関・琴風の目』がメインの評論家となっています」

 土俵上の白熱した戦いとともに、角界の権力争いも熱を帯びてきたようだ。

※週刊ポスト2024年11月29日号

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